第2章 企業からみた我が国経済の変化と課題

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2000年代の我が国経済は、不良債権処理とデフレへの対応に始まり、リーマンショックや東日本大震災といった未曽有の危機に見舞われ、6重苦1と呼ばれた困難に対峙してきた。2013年以降、円高は是正され、自由貿易協定の進展など様々な経済対策の実施と世界経済の拡大もあいまって、長期の景気回復を実現したことで、状況は大きく改善した。しかし、2020年には感染症の世界的な流行による大幅な景気後退を経験することになった。その後の回復局面においても、感染症と経済活動の両立を模索する状態が続き、その中でデジタル化の遅れなど平時に見過ごされてきた課題が改めて浮き彫りになっている。

本章では、このような状況にある我が国経済について、企業という切り口から考察する。第1節では、過去20年間で我が国企業が直面・克服してきた課題について振り返るとともに、感染症下における企業行動の変化について整理する。第2節では、感染症下で浮き彫りとなった課題を含め、今後、我が国企業を取り巻く課題について検討する。第3節は、まとめである。


(1)企業を取り巻く「6重苦」とは、<1>円高、<2>経済連携協定の遅れ、<3>法人税高、<4>労働市場の硬直性、<5>環境規制、<6>電力不足・電力コスト高を指す。東日本大震災後から2012年頃まで、我が国の産業界から問題と指摘されてきたのがこの「6重苦」である。例えば、第6回国家戦略会議(2012年7月)では、「6重苦」の解消こそが空洞化の阻止と対日直接投資を呼び込むインセンティブとなるといった議論がなされている。
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