第3章 女性の就業と出生を巡る課題と対応 第3節

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第3節 本章のまとめ

本章では、女性の就業と出生を巡る現状を整理したうえで、今後の課題を考察した。

第1節では、国内外の比較を通じて女性の就業促進に焦点を当てた。我が国の女性の労働参加率水準は高まってきたものの、欧米主要国と比べると伸びる余地があり、30歳代後半で欧州諸国と開きがある。子育て世帯の女性の就業率は低下傾向がみられるが、こうしたことはキャリア断絶の可能性を示唆している。国内に目を転じると女性の就業率には地域差があり、それは子どものいる女性の就業率によることが明かされた。子どものいる女性の就業率の地域差には3世代世帯の割合も関係しているが、こうした世代間扶助が見込める環境にある世帯ばかりではない。世代間扶助の有無にかかわらず、子育て世帯の就業促進に向けた環境整備は必要不可欠である。保育環境の整備は、量的拡充を通じて、女性の就業を促すと考えられ、育児休業も就業促進効果が期待できる。しかしながら、男性の育児休業取得はいまだ極めて少数であり、今後は就業者の意識の変化や政策面での一層の後押しが求められる。

第2節では、女性の継続就業と結婚・出産を巡る現状を整理し、その課題を示した。国際比較でも我が国国内の都道府県比較でも、就業率の高い地域では出生率も高いという傾向がみられる。しかし、年齢階級別にみると、両者の間にはおおむね関係性はみられず、いずれの年代でも就業率が経年的に高まっており、30歳代では出生率も高まっている。その背景には、就業を促す環境の整備があり、出生の選択が継続就業に不利とならないような環境の整備があると同時に未婚率の上昇が影響していると思われる。こうしたことから、女性の就業が出生に悪影響を与えているとは言えず、我が国の合計特殊出生率の低下要因は、特に未婚率の上昇の影響が大きい32。ただし、独身者の9割がいずれは結婚を希望し、希望出生数も2近傍にあることから、婚姻率の回復を図ることが求められる。

また、結婚・出産と女性の就業の関係では、かつては一般的であった結婚退職は少数派となっているものの、第1子出産で3割が退職しており、特にパートタイム労働者・派遣労働者では、妊娠前後の就業状態に大きな違いがあるなど、雇用形態が継続就業に大きく影響している。さらに、共働きが多数を占め、世帯収入においても配偶者の収入割合が高まっていることからも、家事においても男女ともに参画することが求められるが、男性の家事参加は少ない。男性の家事・育児時間や労働時間と第2子以降の出生確率には相関がみられることから、出生率の反転には男性の働き方を見直すことが重要である。その際、長時間労働の影響も無視できず、働き方改革の進展も含めて、ワーク・ライフ・バランスの一層の改善が求められる。こうした中、感染症の拡大による生活様式の急激な変容は、夫婦の家事・育児分担にも影響を与えており、プラスの面もある。引き続き、働き方改革を進め、誰にとっても働きやすい環境を整備するとともに、子どもを産み育てやすい社会の形成が求められる。


(32)少子化社会対策大綱(令和2年5月29日閣議決定)では、少子化の主な原因は、未婚化・晩婚化と、有配偶出生率の低下であり、特に未婚化・晩婚化(若い世代での未婚率の上昇や、初婚年齢の上昇)の影響が大きいと言及している。
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