第4章 デジタル化による消費の変化とIT投資の課題
2020年の我が国は、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症と略)の拡大防止を図りながら、経済を維持・発展させるという、かつて経験したことのない難しい課題を克服する必要がある。他方、我が国は、かねてよりSociety5.01の実装に向けた取組を開始しており、感染症の課題克服は、こうした取組をより一層加速させる契機となっている。この機会をチャンスと捉え、様々な取組を具体化していく必要がある。
こうした点を踏まえ、本章では、デジタル化により生じる消費の変化やデジタル化を伴うIT投資の課題について考察する。
まず、第1節では、感染症への対応により利用が進んでいる電子商取引(Electronic Commerce、以下ECと略)や、近年利用が拡大しているシェアリングやサブスクリプションについて整理し、インターネットを介した新しい消費スタイルが、実店舗販売や従来型のサービスに及ぼす影響に加え、新たなニーズが生み出すサービスの方向性について考察している。第2節では、従前からの人手不足への対応に加えて、非接触型ビジネスへの対応に向けて増加が期待されるデジタル化を伴う省力化投資の現状について整理し、これらが生産性に与える影響について分析を行っている。加えて、各国比較を通じて、IT投資を阻害する要因等について考察する。第3節は、まとめである。
(1)Society5.0は、「第5期科学技術基本計画(平成28年度~32年度〈令和2年度〉)」において、我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱され、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、新たな社会を指す。より具体的には、IoTで全ての人とモノが繋がることで、新たな価値の創造が可能になるほか、AI(人工知能)やロボット・自動走行といった新たな技術により、少子高齢化をはじめとする様々な課題の克服を目指すものである。