第1章 緩やかな回復が続く日本経済の現状 第4節

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第4節 まとめ

本章では、海外経済の回復を背景に好循環が進む景気の現状、個人消費の本格的な回復のための課題、経済成長を加速しデフレ脱却を実現するための財政・金融政策の取組について概観した。

景気の現状については、2012年末から景気の緩やかな回復基調が続く中で、2016年後半からは海外経済の回復を背景に、企業部門を起点とした好循環が再加速している。こうした中で、有効求人倍率等でみた労働市場の人手不足はバブル期並みの状況となっているが、これは、景気回復による労働需要の高まりに加え、雇用者数は伸びているものの女性や高齢者など相対的に労働時間の短い労働者の参加が高まっているために、マンアワーでみた労働供給が伸びていないことも反映している。人手不足にもかかわらず賃金の伸びが緩やかなものにとどまっていることは、これまでにない現象であるが、賃金の伸びの低さは、労働生産性の伸びが低いことに加え、労働分配率も長期的に低下傾向にあること等を反映している。その背景には、労使ともにリスクを避けて雇用の維持を優先している姿勢がみられる。ただし、今後、人手不足が一層深刻化するにつれて、企業は外部から多様な人材を受け入れる機会が増えることが見込まれ、そうした動きが、賃金決定のあり方にも影響してくる可能性がある。また、物価の動向についても、適切な価格転嫁が行われる下、一段の人手不足の影響が賃金にも波及することにより、安定した物価上昇が実現されることが期待される。

個人消費は、2016年度には熊本地震や生鮮食品価格の上昇など一時的な要因もあってやや低い伸びとなったが、基調としては緩やかに持ち直している。しかしながら、雇用・所得環境の大幅な改善と比べると緩やかな伸びにとどまっている。この背景には、若年層において雇用や収入に対する信頼感が高まらない結果、予想生涯所得を低めに見積もる傾向があることや、中高年層における老後の生活への不安感などがあると考えられ、こうした将来に対する慎重な見方が、晩婚化・非婚化や、モノを所有せずに身軽でいようとするような嗜好の変化と相まって、消費の抑制につながっている可能性がある。こうした点を踏まえると、消費の本格的な回復には、若者の将来の雇用・賃金に対する信頼感の回復や、何歳になっても働ける環境の構築、資産形成の後押し、保有資産の流動化、ストックの活用等によって安心して消費できる環境を構築するとともに、家事サービスなどの潜在的な市場の拡大に向けて官民が取り組むことが重要である。

財政・金融政策は、経済成長の加速とデフレからの脱却に向けて、引き続き経済活動を下支えしている。これまでの金融緩和により、企業や家計の資金需要は増加している。企業は、幅広い業種で設備投資向け資金需要が増加しているほか、海外への投資も活発に行っている。財政についてみると、経済成長と財政健全化に向けた歳出・歳入両面の取組により、基礎的財政収支は改善している。また、中長期的な経済成長に向けた公共インフラ整備によってインバウンド需要の受入機能の強化や、Eコマースの拡大等に対応した物流網の構築が行われている。中長期的な経済成長に向けては、人材への投資も重要である。

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