付注3-1 非正規雇用者が家計に与える影響の推計について
1.貯蓄関数の推計について
二人以上の世帯のうち、世帯主の年齢が25~40歳の勤労者世帯について次の貯蓄関数を推計し、非正規雇用ダミー(D_NONR)に係る係数を図示した。これは世帯主が非正規雇用とみられる世帯について、それ以外の世帯と比べてどの程度多めに貯蓄を行うかを試算したものである。
(貯蓄関数)
○実際の収入が理論値よりも15%以上低い世帯主を非正規雇用者とみなした場合
括弧内の数値はt値。
t値横の***は1%、**は5%水準で有意であることを示す。
○実際の収入が理論値よりも25%以上低い世帯主を非正規雇用者とみなした場合
各変数の定義は以下の通り。
S:貯蓄額(黒字額)、Y:可処分所得、C:定数項、
D_NONR:非正規雇用ダミー、ASSET:金融資産残高、DEBT:負債残高、
HEADS:世帯人員数、WORKERS:有業人員数、AGE:世帯主の年齢、
D_MAN:男性ダミー(世帯主)、D_PARENTS:両親同居ダミー、
D_OWNER:持ち家ダミー
また企業規模ダミーと産業ダミーは、世帯主の勤め先企業の規模と産業に関するダミー変数群。時間ダミーは調査時点に関するダミー変数群。
2.非正規雇用ダミーについて
上記貯蓄関数の説明変数に用いた非正規雇用ダミーは、実際の世帯主収入が、次の賃金関数より推計される理論値よりも一定率以上低い場合に1、それ以外の場合に0の値をとるダミー変数である。なお、賃金関数は男女別(世帯主)に推計した。
(賃金関数)
○世帯主が男性
○世帯主が女性
ただし、W:世帯主の定期収入。
3.その他の事項について
(1) 図の数値は、実際の世帯主の収入が理論値よりも、15%以上(図左)、および25%以上(図右)低い場合に、当該世帯主を非正規雇用者であるとみなした場合の非正規雇用ダミーに係る係数の推計値。この基準によると、世帯主の約3割(図左)および約2割(図右)が非正規雇用者とみなされる。
(2) 推計に用いた個表は2007年10月~2008年9月の1年間分である。
(3) 推計対象世帯の貯蓄率の平均値は21.6%。
4.参考文献
阿部修人・山田知明(2004)「ライフサイクルにおける消費水準の決定:予備的動機とライフサイクル動機に関する構造推定」Hi-Stat Discussion Paper Series, No.37.
斎藤光雄(1971)「クロス・セクション・データによる貯蓄関数の計測」神戸大学『国民経済雑誌』124巻5号pages 82-102
松浦克己(2000)「家計調査、貯蓄動向調査からみた家計の貯蓄と消費、分配の動向」郵政研究所『郵政研究所月報』2000年8月号