付注1-4 産業別均衡為替レートの推計

1.産業別均衡為替レートの概要

為替レート決定の理論の一つとして、為替レートは長期的に国際的な一物一価が成立するような値になるとする購買力平価説がある。業種別均衡為替レートは、購買力平価説を基礎に、基準時点を設定し、日本とアメリカにおいて業種ごとに一物一価が成立するような為替レートである。

2.産業別均衡為替レートの推計

産業別均衡為替レートについては、以下のように作成した。
i)基準時点における為替レートの設定ついては、日本とアメリカの経済状況、データの制約から、1979年1-3月期の実勢レートが1979年の輸出産業全体の均衡為替レートに等しいとした。
ii)その後の均衡為替レートの変化については、日本とアメリカにおける各産業の単位あたり生産額に対する中間投入と雇用者報酬の合計から、日本とアメリカにおけるそれぞれの産業に係る価格指数を作成し、相対価格の比率を算出した。具体的には、日本とアメリカについて、繊維、化学、一次金属、一般機械、電気機械(精密機械含む)、輸送機械の6業種の産業別の価格指数を次式で求めた。

価格指数=(雇用者報酬+中間投入額)/実質産出額

次に両国のそれぞれの産業別価格指数の相対価格比率に対し、日本の輸出に占める各業種別のシェアを加重平均することで、輸出産業全体の産業別価格指数の相対価格比率を求めた。

(全体の価格指数の相対比率)= Σ(産業別の価格指数の相対比率)
×(各産業の輸出ウエイト)

なお、均衡為替レートについては、様々な推計方法があり、基準時点の取り方や産業のカバレッジ等によってもその値は変化するため、十分幅を持って考える必要がある。

(備考)

  1. 内閣府「平成7年度年次経済報告」、吉川洋「日本経済とマクロ経済学」、貞廣彰「戦後日本のマクロ経済分析」を参考に作成。
  2. 内閣府「国民経済計算」、米国商務省、財務省「貿易統計」、日経NEEDSより作成。