付注1-2 均衡経常収支の推計について
1.モデル
千明・深尾(2002)を基礎とし、本モデルを示す式は、
また、輸出価格に関しては、輸出財生産に輸入原材料と国内生産要素が投入されていることを反映して、
Px=α+β×(π×Pm*)…(b)
ただし、
Y=GDP(実質値、以下同様)、C=民間消費、T=純租税、G=政府支出、I=民間投資、X=輸出等、M=輸入等、M*=(日本を除く)世界輸入、S=米国株価、r=実質金利、π=名目為替レート(円建て)、P=GDPデフレーター、P*=米国GDPデフレーター、Px=輸出価格(円)、Pm*=輸入価格(ドル)、Pw*=競争国輸出価格(ドル)、
実質為替レートをとすると、(a)、(b)式を実効為替レートθについて解くことができる。両式をθ及び米国GDPデフレーターP*で書き直すと、
潜在GDP時に、ともにθの関数である均衡貯蓄投資差額と均衡Xと均衡Mとの差額を一致させるθを求め、そのときの財・サービス収支を均衡財・サービス収支とした。
ただし、乱高下した2008年の原油価格の影響を除くため、2008年第3四半期、第4四半期の原油価格、輸出入価格、デフレーターは第2四半期の値を用いた。
2.推計結果
・消費、投資、租税関数
1)消費デフレーター
2)民間消費(実質)
3)民間投資(実質)
4)GDPデフレーター前期比上昇率
5)間接税-補助金
6)家計の直接税
7)法人税
8)GDPギャップ
9)一般政府純租税
T=TIN+TH+TC+TR
10)実質GDP
GDP=CT+I+G+EGS-MGS
11)名目GDP
GDPV=PGDP×GDP
・貿易関数
12)財貨・サービスの輸入(SNAベース、実質)
13)財貨・サービスの輸出(SNAベース、実質)
14)輸出物価
15)日本を除く世界の実質輸入
16)競争国輸出価格
17)米国長期実質金利
RRL=RLAUS-GDUSE
18)米国GDPデフレーター前期比上昇率
19)米国GDPギャップ
20)日本輸入価格
(備考)
- 所得収支及び経常移転収支は外生扱いし、財サービスの収支を推計している。
- ( )内はt値、(-1)は1期ラグを表す。
- AR2:自由度修正済決定係数、SE:標準偏差、DW:ダービン・ワトソン比。
3.変数一覧
変数の原出所及び内容については以下のとおり。
消費、投資、租税関数
変数名 | 資料 | 内容 |
PCT | SNA | 民間消費デフレーター(2000年=1) |
PGDP | SNA | GDPデフレーター(2000年=1) |
YENDOL | MESM | 名目円・ドルレート(邦貨建て期中平均) |
PIM | IFS | 輸入単価指数(ドル、2000年=1) |
TIME | 1980Q1を1として毎期1ずつ増加するトレンド | |
CT | SNA | 民間最終消費支出(2000年価格) |
GDPV | SNA | 名目GDP |
D | SNA | 固定資本減耗 |
T | SNA | 一般政府純租税 |
I | SNA | 実質民間投資(設備+住宅+在庫)(2000年価格) |
K | SNA | 民間企業資本ストック |
GDP | SNA | 実質GDP(2000年価格) |
RSGB | MESM | 長期国債(10年、利付)応募者回り(%、期中平均) |
GPE | 期待インフレ率 | |
GPGDP | GDPデフレーターの上昇率(当期から来期まで、年率) | |
DY | 作成 | GDPギャップ |
TIN | SNA | 間接税ー補助金 |
Q1 | 季節ダミー変数 | |
Q2 | ||
Q3 | ||
TH | SNA | 家計の直接税 |
TC | SNA | 法人税 |
D37.5 | 法人税率ダミー変数 | |
D40 | ||
D42 | ||
D43.3 | ||
DUM1 | 1986Q2~87Q1を1とするダミー | |
GDPF | 作成 | 潜在GDP |
TR | SNA | その他の純租税 |
EGS | SNA | 輸出等(2000年価格) |
MGS | SNA | 輸入等(2000年価格) |
ET | SNA | 海外からの要素所得受取(2000年価格) |
MT | SNA | 海外からの要素所得支払(2000年価格) |
ASIA | 作成 | 工業製品世界輸出に占めるアジア地域(韓国、香港、中国、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン)のシェア |
貿易関数
MW | IFS | 日本を除く世界実質輸入(2000年価格) |
ST | S&P | 米国株価 |
PEX | IFS | 輸出単価指数(ドル、2000年=1) |
PWE | 作成 | 競争国(米、加、英、仏、独、伊、韓国、香港、中国、シンガポール、タイ)輸出価格(ドル、2000年=1) |
GDPUS | IFS | 米国実質GDP(2000年価格) |
PGDPUS | IFS | 米国GDPデフレーター(2000年=1) |
OIL | 貿易統計 | 原油価格(ドル/バレル) |
RRL | 米国長期実質金利([17]により作成) | |
RLAUS | IFS | 米国10年物国際利回り(%、期中平均) |
GDPUSE | 米国期待インフレ率([18]のGPGDPUSの理論値) | |
GPGDPUS | 米国GDPデフレーターの上昇率(当期から来期まで、年率) | |
DYUS | EO | 米国GDPギャップ |
GDPFUS | EO | 潜在GDP |
GMW4 | 世界輸入対前期比成長率の当期から3期ラグまでの平均 |
(資料) | SNA:内閣府「国民経済計算」 |
MESM:日本銀行「金融経済統計月報」 | |
IFS:IMF「International Financial Statistics」 | |
EO:OECD「Economic Outlook」 | |
S&P:Standard&Poor’s |