第1章 世界経済の変動と日本経済
日本の景気回復は、2008年に入ってから足踏み状態にある。その主な原因は、景気回復6年目の2007年、日本経済が遭遇した大きなショックである。アメリカのサブプライム住宅ローン問題に端を発した金融資本市場の変動、原油・原材料価格の高騰は、企業収益やマインドを圧迫し、企業や家計の行動を慎重化させた。アメリカの景気減速の直接の影響も現実化し、日本からの輸出にも影響を及ぼし始めた。期待されていた「企業から家計への景気回復の波及」は、企業部門の好調さが失われ、実現に至っていない。
日本経済はアメリカ発のショックの影響を受けたが、これは、日本経済がなぜ外的ショックに対し脆弱なのかを考える契機でもある。アメリカのサブプライム住宅ローン問題は、世界における資金フローの構造的な変化の所産でもある。そうした構造変化が日本経済にどう影響し、また日本経済がどう対応してきたかを問う必要がある。原油・原材料価格の高騰もまた、同様の問題構造を持っている。
こうした問題意識から、本章では、以下の事項を検討する。第1節では、現在の景気局面を点検する。第2節では、世界経済の構造変化を踏まえ、サブプライム住宅ローン問題の原因と展開を振り返った上で、日本経済との関係を論ずる。第3節では、グローバルな競争という背景の下で、原油価格等の高騰や円高が我が国の物価と賃金に及ぼした影響を検討する。第4節では、財政金融政策の動向を概観する。第5節で、まとめを行う。