付注3-1 ミンサー型賃金関数について
1. 概要
ミンサー型賃金関数は、職業訓練を含めた教育の投資効果や勤続経験が人的資本の蓄積をとおして賃金を向上させるとする人的資本理論に基づき導出された賃金関数である。雇用形態別に労働者の属性を考慮したミンサー型賃金関数を推計することで、正規雇用者と非正規雇用者との間の人的資本の蓄積の違いに由来する賃金格差の動向を検証する。
2. 推計方法
厚生労働省(2005)「賃金構造基本統計調査」の雇用形態別(正社員・正職員計、正社員・正職員以外計)の計数から業種・学歴・年齢階級・企業規模で区分されたサンプルを用い、以下の推計式を男女別に推計した。なお、推計はそれぞれの賃金サンプルに含まれる労働者数でウエイト付けして行う(Weighted Least Squares)。
賃金サンプルは、最大で「2(雇用形態区分数)×13(業種数)×11(年齢階級区分数)×3(学歴区分数)×3(企業規模区分数)」の計2,574個の賃金サンプルが入手できる。
ダミー変数の定義は、以下のとおり。
3. 推計結果
男子 | 女子 | |||
---|---|---|---|---|
勤続年数 勤続年数の二乗 |
0.06584
-0.00282 |
(5.041)*** (-3.811)*** |
-0.00050 0.00029 |
(-0.113) (0.940) |
正規雇用ダミー 勤続年数×正規雇用ダミー 勤続年数の二乗×正規雇用ダミー |
-0.01895 -0.00973 0.00204 |
(-0.439) (-0.744) (2.762)*** |
-0.03482 0.04349 -0.00112 |
(-2.267)** (9.748)*** (-3.628)*** |
【学歴ダミー】 大学・大学院卒 高専・短大 |
0.29187 0.07083 |
(85.094)*** (8.005)*** |
0.27701 0.13803 |
(46.521)*** (34.765)*** |
【企業規模ダミー】
1,000人以上 100~999人 |
0.01615 -0.05123 |
(3.988)*** (-14.208)*** |
0.16400 0.08015 |
(31.780)*** (23.677)*** |
【産業ダミー】
製造業 電気・ガス・熱供給・水道業 情報通信業 運輸業 卸売・小売業 金融・保険 不動産業 飲食店・宿泊業 医療・福祉 教育・学習支援業 複合サービス事業 その他サービス業 |
-0.09172 0.06063 0.02544 -0.08858 -0.02355 0.10409 0.13287 0.00029 0.17990 0.14258 -0.19178 0.02012 |
(-16.455)*** (1.966)*** (2.525)*** (-11.993)*** (-3.792)*** (11.245)*** (1.848)** (0.010) (11.437)*** (8.364)*** (-3.963)*** (2.647)*** |
-0.09566 0.13283 0.10126 -0.03744 0.00756 -0.01541 0.11508 0.00688 0.13177 0.15280 0.00753 0.09253 |
(-6.259)*** (0.986) (5.068)*** (-1.430) (0.485) (-0.929) (1.220) (0.265) (8.569)*** (7.627)*** (0.164) (5.725)*** |
定数項 | 5.17410 | (119.287)*** | 4.96224 | (235.840)*** |
サンプルサイズ
F値 Adj-R2 |
2306
2078.12 0.9999 |
2185
861.3151 0.6508 |
(備考)1. |
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」により内閣府で推計。 |
2. |
"Education and Earnings"(Mincer、1974)、"Labor Economics"(Cahuc and Zylberberg、2004)を参考。 |
3. |
学歴、産業及び企業規模ダミーのレファレンスグループは、それぞれ「高卒」、「建設業」、「10~99人規模」。 |
4. |
( )内はt値を表す。 |
5. |
**、***はそれぞれ有意水準が5、1%水準を満たす。 |