付注2-6 新規公開株の株価収益率の分析方法について
1. 概要
新規公開企業の株価についてベンチマークに対する相対的な株価収益率を分析した。1999年~2003年にJASDAQ市場で株式公開した企業の株価の収益率について、ROA、ベンチャーキャピタルの投資の有無、公開所要年数、業種といった要因がどのように影響するかを分析した。
2. データ
1999年~2003年にJASDAQ市場で株式公開した企業を分析対象とした。データは日経NEEDSのデータを用いた。株価のデータについては、権利落調整済株価のデータが得られる企業は権利落調整済株価を利用した。権利落調整済データが得られない企業については、原則としてそのままの株価を利用し、株式分割等による株価の下落がみられる月を時価総額で補完した。
3. 分析方法
新規公開株の株価収益率をみるための指標として累積超過収益率を計算し、ROAの改善/悪化、ベンチャーキャピタルの投資状況、公開所要年数、業種といった要素により累積超過収益率にどのような違いがあるかを分析した。
(1)累積超過収益率の計算
銘柄の株式公開カ月後における月間の収益率が、同じ期間のベンチマークの収益率がのとき、銘柄の株式公開カ月後におけるベンチマーク調整後の収益率(超過収益率)を以下のとおり計算する。
株式公開カ月後にJASDAQ市場に存続している銘柄の超過収益率の平均(平均超過収益率)を
と計算する。
平均超過収益率を株式公開後からカ月分累積した累積超過収益率を
として計算する。この累積超過収益率を新規公開株の株価収益率の指標として分析した。
なお、収益率はすべて連続複利ベースの収益率を用いた。
(2)ROA
新規公開をした年の次年度のROAが新規公開した年の前年度のROAよりも改善している企業を「ROA改善」、悪化している企業を「ROA悪化」とした。
(3)ベンチャーキャピタルの投資状況
新規公開の前年度(データが入手できない場合は新規公開した年度)の上位10大株主の中にベンチャーキャピタルが入っている企業を「ベンチャーキャピタル投資先」、それ以外を「ベンチャーキャピタル非投資先」とした。
なお、ベンチャーキャピタルの投資状況を用いた分析に限り分析対象を2001年~2003年にJASDAQ市場で株式公開した企業に限定した。
(4)公開所要年数
設立年から新規公開年までの経過年数を公開所要年数とした。
(5)業種
この分析での業種名は、東証業種分類の下表の項目に対応している。
業種名 | 東証業種分類 |
---|---|
製造業 | 製造業(大分類) |
情報・通信 | 情報・通信業(中分類) |
卸売・小売 | 商業(大分類) |
サービス | サービス業(大分類) |
建設・不動産 | 建設業(大分類)及び不動産業(大分類) |