平成19年度

年次経済財政報告

(経済財政政策担当大臣報告)

−生産性上昇に向けた挑戦−

平成19年8月

内閣府


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第4節 持続する財政健全化

 政府は、基礎的財政収支の黒字化を目指し、歳出の徹底した見直しを進めるなど、財政健全化に向けた取組を強力に進めてきた。この結果、国・地方を合わせた基礎的財政収支の赤字は、2002年度にはGDP比で5.7%と高水準に達していたが、2006年度に1.7%程度、さらに2007年度には0.6%程度となると見込まれるなど、着実な改善をみせている48。以下では、これまでの財政健全化に向けた取組を振り返り、財政収支の改善に寄与した諸施策について概観するとともに、今後の方向性やリスク要因について検討する。


1 これまでの財政健全化の取組

●歳出削減努力が財政健全化に大きく寄与
 財政収支の対名目GDP比の動向を、利払い費(ネット)、景気動向の影響を受ける循環的な部分(循環的財政収支)、そしてそれら以外の構造的な部分(構造的基礎的財政収支)に分けてみてみる(第1−4−1図)。これによれば、2003年度以降の財政収支の改善には、利払い費(ネット)の減少、税収増による循環的財政収支の改善も寄与しているが、改善幅の大宗は構造的基礎的財政収支の改善によって説明されることが分かる。
 基礎的財政収支への歳入・歳出別寄与をみると、歳入面では2002年度に大幅にマイナス寄与を示したものの、2003年度には所得税、間接税が大幅にマイナス寄与を縮小し、法人税はプラス寄与となったのち、2004年度以降はいずれもプラスに寄与している。また歳出面では、2000年度以降収支に対してプラスに寄与しており、特に2004年度までは公共投資の削減が収支の改善に大きく貢献している。一方、高齢化を反映し社会保障費が一貫してマイナスに寄与している(第1−4−2図)。

●明確な目標に基づく財政健全化の取組
 我が国では、2001年度以降、明確な中期的な財政健全化の目標を設定した上で各分野における歳出抑制努力を行いつつ、毎年度の予算編成が行われてきた。具体的には、まず「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(基本方針2001)」において、本格的な財政再建に取り組む際の中期目標として基礎的財政収支の黒字化を目指すことが適切とし、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002(基本方針2002)」において財政健全化の目標として、2010年代初頭に国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化することを目指すこととした。また「構造改革と経済財政の中期展望(改革と展望)」において政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)が2006年度までの間、2002年度の水準を上回らない程度とすることを掲げた。

●「基本方針2006」において示された歳出・歳入一体改革の取組
 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006(基本方針2006)」においては、2011年度には国・地方の基礎的財政収支を黒字化することや、基礎的財政収支の黒字化を達成した後も、2010年代半ばに向けて債務残高GDP比を安定的に引き下げることを確保することなど、財政健全化の時間軸と目標が設定された。基礎的財政収支黒字化の達成に向けては、2007年度以降5年間の歳出改革の内容を示し、その改革の内容を計画的に実施することとした。また、こうした歳出削減を行ってなお、基礎的財政収支を黒字化するために必要となる額を満たさない部分については、歳入改革による増収措置で対応することを基本とすることとした。さらに、2011年度に基礎的財政収支の黒字化が達成さえすればよいというのではなく、改革後の税制が、国・地方それぞれの債務残高GDP比の安定的な引下げを構造的持続的に達成し得る体質を備えなければならない、との考え方が示されている。

●2007年度予算でも歳出改革を強化
 2007年度予算については、歳出面において、「基本方針2006」に定められた歳出改革の内容に沿って、社会保障では制度・施策の見直しにより、高齢化等に伴う歳出の伸びを約2,200億円抑制するとともに、公共事業ではこれまでの改革努力を継続し3%を上回る削減を行うなど、各分野の改革を確実に実施している。このように徹底した歳出削減方針を貫き、多くの経費を前年度当初予算より減額する中で、国民や地域に対して温かみのある取組に配慮したメリハリのある予算配分を行っている。その結果、大幅な税収の増加を見込む一方で、一般歳出は、特別会計改革に伴う影響を除き実質的に約0.3兆円の増加にとどめている。また、併せて特別会計改革を実施するとともに、道路特定財源の見直しも行うこととしている。
 地方交付税交付金等については、税収増により法定率分が大幅に増加する中で、地方歳出の見直し等により、可能な限り抑制し、前年度当初予算に比べ約0.4兆円の増加にとどめている。あわせて、交付税特別会計における国負担分の借入金を一般会計に承継し、その償還を開始することとした。この債務償還費の増加約1.7兆円を含め国債費は約2.2兆円の増加となっている。
これらの結果、新規国債発行額は、前年度当初予算に比べ約4.5兆円の減額となった。これに加え、前述の債務償還の開始により、実質的に約6.3兆円の財政健全化を図っている。
 歳入面については、2007年度の税制改正において、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向け、我が国経済の成長基盤を整備する観点から減価償却制度の抜本的見直しを行うとともに、中小企業関係税制、国際課税、組織再編税制・信託税制、金融・証券税制、住宅・土地税制、納税環境整備などについて所要の措置を講ずることとした。景気回復の持続が見込まれることもあり、2007年度の租税等の収入は57.5兆円と前年度当初予算比15.6%増となる見込みである。

●三位一体改革の下での取組
 2003年6月に閣議決定された「基本方針2003」において、地方が決定すべきことは地方が自ら決定するという地方自治の本来の姿の実現に向け、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分の見直しに関する一体的な改革の方針が示された。
 この方針に基づき、地方の意見を真摯に受け止め、検討を進めた結果、2006年度までに、約4.7兆円の国庫補助負担金の改革、約3兆円の税源移譲、約5.1兆円の地方交付税及び臨時財政対策債の改革を実現した。

●2007年度地方財政計画でも進む歳出削減
 2007年度地方財政計画をみると、歳出面については、国と同じく、引き続き、歳出削減路線を堅持する中で、「基本方針2006」に沿って、給与関係経費、投資的経費を削減するなど、地方歳出を厳しく見直し、一般歳出は1.1%減に抑制された。
 歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの一般財源総額の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとした。この結果、計画総額は83兆1,261億円であり、前年度に比し、247億円減少した。


2 財政健全化のリスクと今後の取組

●長期金利上昇が財政に与える影響
 現在の財政状況をみると、まずは2011年度には、国・地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化させるという目標に向けて、着実に改革努力の成果が現れてきていると考えられる。政府は、その後の目標として、2010年代半ばにかけて、債務残高のGDP比を安定的に引き下げていくとしているが、長期金利が上昇するような場合には、その達成はより困難なものとなる。
 2007年度末の国・地方の長期債務残高は773兆円程度に達する見込みであり、2007年度には新規財源債は25.4兆円程度、借換えのために発行される国債は99.8兆円程度であり、合計で125.2兆円の国債が発行(財政融資特会債を除く)される予定となっている。この場合、仮に金利が上昇すれば、こうした新規発行分の利払い費の上昇に直接影響するとともに、既発債についても多額の借換債を発行していることから、借換え時の調達コスト上昇につながり、長期金利上昇が財政に与える影響は大きくなると見込まれる。財務省の「平成19年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」によると、標準ケース(金利2.3%)と比べて2008年度以降の金利が1%ポイント上昇した場合には、国債費が2008年度では1.4兆円程度、2010年度では3.8兆円程度増加し、また、同様に標準ケースに比べて金利が2%ポイント上昇したときには、2008年2.7兆円程度増加、2010年度で7.7兆円程度増加するとの計算が示されている(第1−4−3図)。

●歳出・歳入一体改革の実現に向けた取組
 これまで基礎的財政収支の改善はみられるものの、財政が極めて厳しい状況にあることには変わりはない。
 先に述べた財政健全化の目標を確実に達成するために、政府は「経済財政改革の基本方針2007〜「美しい国」へのシナリオ〜(基本方針2007)」(平成19年6月19日閣議決定)において、「成長なくして財政健全化なし」の理念の下、経済成長を維持しつつ、国民負担の最小化を第一の目標に、歳出改革に取り組み、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにすることを明確にしている。
 このうち、歳出改革の具体的な取組としては、入札・契約制度改革の推進、コスト縮減などを通じた公共投資改革、「医療・介護サービスの質向上・効率化プログラム」等の推進等を通じた社会保障改革、国・地方を通じた行政改革や地方分権改革の推進、地域の民間給与のより一層の反映等を通じた公務員人件費改革が挙げられている。歳入面においては、2007年秋以降、税制改革の本格的な議論を行い、2007年度を目途に、社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通しなどを踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく、取り組むこととされている。その際、「基本方針2006」で示された歳入改革の基本的考え方や与党税制改正大綱を踏まえることとされている。


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