第3章 日本経済を活性化するための課題
第3章 日本経済を活性化するための課題
バブル崩壊後、既に10年余りの年月が流れている。この間にも景気循環は繰り返されており、景気回復局面も3回経験してきている。しかし、いずれも短命に終わっており、10年間の年平均実質経済成長率は、わずかに1%程度にとどまっている。1980年代までは「奇跡」とまで言われた日本経済の良好なパフォーマンスは一転し、今や多くの先進国から取り残され、世界経済の大きなリスク要因の一つに挙げられるような状況にある。
日本経済の将来に対して、家計も企業も強い危機感を抱いている。最近における「産業空洞化」の懸念もその現れの一つである。「産業空洞化」の懸念の背景には、「中国からの輸入急増」、「貿易・サービス収支の黒字縮小」、「産業構造のサービス化」といった現象がある。しかし、このような現象を分析していくことによって浮かび上がってくるのは、日本の経済構造が非効率なものになっており、経済の停滞から脱して持続的な経済成長を達成するためには、日本の経済構造を変革する必要があるということである。
日本の経済構造を変革するために取り組まれるべき経済活性化の基本は、生産性上昇率を引き上げ、資産収益率を高めることである。そのためには、企業経営を効率化するとともに、生産要素を生産性の低い部門から高い部門に速やかに移動できるようにすること、研究開発を効率化し技術進歩を促すことが重要である。
日本の経済構造の変革は多くの困難を伴うものとなろうが、早急にやり遂げなければならない課題でもある。各経済主体がそのような課題に積極的に取り組めるためには、構造改革を通じて日本経済が向かおうとしている新しい方向性が示されていることも重要であろう。
本章では、このような問題意識から、我が国の抱える構造問題と経済活性化の課題を取り上げる。第1節では、「産業空洞化」への懸念を取り上げながら、我が国の抱える構造問題と経済活性化の課題を浮き彫りにする。そこで明らかにされるのは日本経済の非効率性であり、それを解決するための生産性向上努力の重要性である。これを受けて、第2節では、生産性を上昇させるために取り組む必要のある経済活性化の柱を整理し、そのような観点からみたときの構造調整の現状及び今後の課題について考察する。最後に、第3節では、このような経済活性化によってどのような日本経済が実現されるのか、その姿を明らかにすることにする。