17 英国 United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland |
<2007年の経済>
2007年の実質経済成長率は、前年比3.0%と06年の同2.9%からわずかに加速した。金融資本市場の混乱の影響から英国の景気をけん引してきた金融セクターの業況悪化が懸念されていたが、07年の7〜9月期、10〜12月期ともに前期比0.6%と年前半からはやや減速するも引き続き堅調な成長となった。
07年の成長は、個人消費を中心とした内需が主導した。消費が好調となった背景としては、雇用情勢の改善が続き、可処分所得も年後半に伸びが加速したことによる下支え効果が考えられる。設備投資については、企業の設備稼働率のひっ迫感の高まりなどから年後半に伸びが加速し、07年通年では堅調な伸びとなった。一方、住宅市場では住宅着工件数が減少するなど調整局面を迎え、GDPベースの住宅投資も年後半に減少に転じた。外需については、アメリカやヨーロッパ等の主要輸出先の景気減速等を受けてマイナスの寄与となった。
年初に3%前後で推移していた消費者物価上昇率(前年比)は、公共料金の値下げの影響が浸透した結果、7月以降は2%のインフレ目標近傍で推移した。名目実効為替レートで増価が 続いていたポンド相場は、年半ば以降おおむね減価基調で推移した。
<2008年の経済見通し>
2008年の経済成長率は1%台後半となる見込みである(政府見通しは、1.75〜2.25%、民間機関24社の平均1.8%(08年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2.2%(07年11月時点))に比べて下方修正されている。なお、欧州委員会の春季経済見通し(08年4月)では、1.7%と予測されている。
08年は緩やかな回復が続くものの、内需、特に金融・住宅セクターの減速による成長鈍化が予想される。所得環境は緩やかに改善しているが、物価上昇による消費者の実質購買力低下、住宅価格の下落による資産効果の剥落等から消費の伸びは緩やかになるとみられる。投資については、企業景況感の悪化、金融機関の貸出基準の厳格化等を受け、設備投資が減速するとみられ、住宅市場が調整局面を迎える中で住宅投資も弱い動きが予想される。外需についてはポンド安による輸出の下支え効果もあってプラス寄与となると予想される。
こうした見通しに対する下方リスクとしては、金融市場の混乱が長期化・深刻化した場合に
は経済成長への金融セクターの寄与が大きい英国ではその影響も大きいと懸念される。
<財政金融政策の動向>
ここ数年改善が続いていた英国の財政収支は、2007年度にGDP比2.8%の赤字(実績見込み)、となり、さらに08年度には同3.3%へ悪化し、3年ぶりに安定成長協定に定められた3%の基準を超過すると見込まれる。雇用や企業収益の悪化により所得税が、住宅市場の減速により印紙税が、消費の減速や付加価値税の対象にならない食品への支出が増加することにより間接税が、それぞれ減少することなどによる歳入減が予想される。
金融政策について、イングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(MPC)は、07年12月、エネルギーや食料品等の価格上昇による先々のインフレ圧力を注視しつつ、金融市場の混乱による銀行間金利の上昇や景気減速懸念等を考慮し、政策金利(バンクレート)を約2年半ぶりに引き下げて5.50%とした。その後、08年に入り各種指標等でさらなる状況の悪化が懸念されたことなどから08年2月、4月にも政策金利を引き下げて5.00%とした。