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タイ        The Kingdom of Thailand

タイ経済のこれまで

2007年の経済>
  2007年の経済成長率は4.8%と06年(5.1%)からやや減速した。コンピュータや自動車等の工業製品を中心に、中国、ASEAN向けの輸出が好調に推移したことなどから、外需が景気をけん引した。一方、内需は、年前半は06年9月に発生したクーデターによる政情不安等から民間需要が大きく減速したため低調であった。年後半には、8月に新憲法が国民投票を経て承認・公布され、12月には下院総選挙が実施されるなど民政復帰に向けたプロセスが進む中で、内需全般に持ち直しの動きがみられた。
  雇用情勢をみると、失業率は1.4%と06年(1.5%)よりおおむね横ばいで推移した。また、物価動向をみると、コア消費者物価上昇率は07年は前年比1.1%と低位で安定していたものの、総合でみた消費者物価上昇率はエネルギー価格上昇の影響等を受け、07年9月より加速がみられる。

タイの主要経済指標

2008年の経済見通し>
  2008年の経済成長率は5%前後になると予測される(政府見通し4.5〜5.5%(08年5月時点)、民間機関8社の平均4.8%(08年5月時点))。
  08年は、世界経済の減速を背景に外需の伸びは鈍化するものの、民政復帰実現(08年2月サマック連立政権が誕生)による消費者及び企業マインドの改善や後述する各種減税等の新たな景気刺激策を受け、内需の回復は続くものとみられる。

<財政金融政策の動向>
  軍事政権下で承認された2008年度(07年10月〜08年9月)予算をみると、歳出は国防予算の増額や公務員給与の引上げ(4%増)等を背景に前年度比6%増の1兆6,600億バーツ、歳入は同5%増の1兆4,950億バーツとなっており、財政赤字は1,650億バーツと前年度(1,462億バーツ)に比べ拡大している。また、サマック政権誕生後、景気刺激策として08年3月に個人所得減税、中小企業支援減税、投資減税の三つを柱とする約400億バーツ規模(GDP比0.5%程度)の減税措置、4月に農民や低所得者層向けに債務返済猶予や金利軽減等が打ち出された。
  金融政策については、タイ中央銀行は内需の低迷やコア消費者物価上昇率がインフレ・ターゲット内(0.0%〜3.5%)で安定して推移していたことなどを受け、07年前半に計5回1.75%ポイントの利下げを行った。その後は、景気は緩やかに回復しており、また、インフレが加速(08年6月は消費者物価は前年比8.9%の上昇)しているものの輸出に減速の兆しがみられることなどを背景に、政策金利は3.25%に据え置かれている(08年6月末現在。ただし、5月の政策決定会合でもインフレが加速すれば利上げを行う用意があることを示唆している。)。
  為替の動向をみると、外国人投資家からの資金流入等により、06年より対ドルでバーツ高が進行しており、07年は06年に比べると増価ペースは鈍化したものの、年5.9%の増価となった(06年は10.8%増価)。08年に入ると、3月から減価傾向に転じ、以降反政府デモによる政情不安、インフレ率の上昇、貿易収支の悪化等を背景に減価が続いている。


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