10 マレーシア Malaysia |
<2007年の経済>
2007年は個人消費や総固定資本形成等の内需を中心に景気は拡大し、成長率は前年比6.3%と、06年(5.9%)から伸びが加速した。個人消費は、可処分所得の増加や安定した雇用環境、公務員給与の引上げ等を背景に伸びを高め、景気をけん引した。また、総固定資本形成は、第9次マレーシア計画(06〜10年)に伴う地域開発プロジェクトの実施等により堅調に推移した。一方、輸出は、資源価格高騰の影響によりパーム油、原油、液化天然ガス(LNG)等が高い伸びをみせたものの、シェアの大半を占める電気・電子製品がマイナス成長となり、07年は全体として伸びは鈍化した。
物価の動向を見ると、06年2月に実施された燃料小売価格の引上げの影響が剥落したこともあり、07年の消費者物価上昇率は総じて低位で推移したものの、同年11月以降は食品価格等の上昇を受けて伸びがやや高まった。
<2008年の経済見通し>
2008年の経済成長率は、5〜6%程度になると見込まれる。(政府見通し6.0%〜6.5%、民間機関8社の平均5.5%(08年5月時点))。08年は、世界経済の減速やインフレ圧力の高まり等の下方リスクが懸念されるものの、資源価格が高騰する中で資源収入の増加が期待できるとともに、政府による積極的な開発投資も継続するとみられることから、引き続き個人消費や投資を中心とした内需が景気をけん引すると見込まれる。また、外需は電気・電子製品輸出は低迷するものの、一次産品等の輸出が堅調に推移し、景気を後押しするものと考えられる。
<財政金融政策の動向>
財政政策をみると、2008年度予算は、歳出の伸びを前年度比3.9%増(07年度は同13.4%増)と抑えたことから、財政収支はやや改善し、GDP比で3.1%程度の財政赤字が見込まれている(07年度GDP比3.2%)。一方で、原油価格の高騰を受け、国内の燃料価格統制のための財政負担が増大しており、その対策として政府は08年6月にガソリン及び軽油の小売価格をそれぞれ41%、63%引き上げ、さらに7月から電力料金の引上げを実施すると発表した。
金融政策については、政策金利であるオーバーナイト金利は、国内経済も良好で物価上昇も他のアジア諸国に比べれば緩やかであることから、06年4月以降3.50%に据え置かれている(08年5月末現在)。