11 インド India |
<2007年度の経済>
2007年度の経済成長率は、9.0%となった。四半期の推移をみると、年度前半の07年4〜6月期、7〜9月期は前年比9.2%、9.3%と推移した後、年度後半の10〜12月期、08年1〜3月期はともに同8.8%とやや鈍化したが、引き続き高い伸びを維持した。産業別にみると、GDPの約60%を占める第3次産業が景気をけん引し、うち商業・ホテル・運輸・通信部門及び金融・保険部門はともに二桁の高い伸びを維持した。一方、GDPの約15%を占め、06年度に二桁の伸びをみせた製造業は、同8.8%増と一桁の伸びに鈍化した。就業者数で全人口の約60%を占める農業(GDPの約18%)は、堅調に推移し同4.5%増となった。
物価については、インド準備銀行が重視している卸売物価上昇率は、07年後半に前年比3%台まで低下したが、一次産品価格等の上昇から07年12月以降は再び上昇に転じた。08年に入ると、2月に燃料価格の引上げを行ったことなどからさらに伸びは高まり、08年1〜3月期同5.7%、4月同7.6%となった。なお、6月にも燃料価格の再引上げが実施されており、物価上昇懸念が高まっている。
<2007年度の経済見通し>
2008年度の経済成長率は、8%前後と見込まれる(民間機関5社の平均見通し7.9%(08年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(07年11月時点8.2%)に比べ下方修正されている。世界経済の減速等から製造業を中心に減速するものの、サービス業の堅調な伸びに加え、インフラ整備に伴う建設需要の高まり等によって、引き続き高い成長を維持すると見込まれる。一方、下方リスクとしては、資源価格の高騰等を背景とした物価上昇の影響等が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政政策をみると、財政赤字の削減が課題となっており、中央政府は2004年度以降、財政赤字を毎年度GDP比0.3%相当額ずつ削減し、09年3月末までにGDP比で3.0%に引き下げることとしている。2008年2月28日に発表された08年度予算案は、安定成長の維持等を目指し、個人所得税の最低課税額の引上げ(11万ルピー→15万ルピー)、物品税の引下げ(16%→14%)等を実施するほか、第11次5か年計画(07〜11年度)に基づきインフラ整備、農村支援、福祉・教育対策に重点が置かれている。歳出は前年度比(当初予算比、以下同じ。)10.3%増、歳入は同24.0%増を見込んでおり、財政赤字はGDP比2.5%と07年度の同3.1%(実績見込み値)から改善するとされている。
金融政策については、インド準備銀行(中央銀行)は、04年以降引締めスタンスをとっており、国内の物価上昇や過剰流動性等に配慮した政策運営を行っている。08年度の方針をみると、卸売物価上昇率を出来る限り早く前年比5%近傍まで引き下げることを目指しつつ、08年度の目標は同5.5%とし、マネーサプライ(M3)の伸びは16.5〜17.0%に鈍化させるとしている。政策金利の動向をみると、卸売物価上昇率及びマネーサプライが高い伸びで推移しているため、預金準備率は07年に7回、08年に入り4回引き上げられ8.75%とされている。また08年6月には、政策金利であるレポレート(貸出金利)は1年3か月ぶりに2回引き上げられ8.5%とされている(リバース・レポレート(借入金利)は6.0%に据置)。
為替の動向は、高まる物価上昇に対する懸念等から減価基調で推移しており、08年5月末では1ドル=42.2ルピーと、07年末比6.5%の減価となっている。