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3 中 国      People's Republic of China

中国経済のこれまで

<2007年の経済>
  2007年の経済成長率は前年比11.9%と、内外需ともに堅調に推移し、5年連続の二桁の高成長となった。四半期別にみると、年後半にかけて成長率はやや鈍化する動きがみられた。これは世界経済の減速や輸出抑制策の影響による輸出の伸びの鈍化に加え、経済の過熱防止とインフレ抑制に取り組む政府が、07年後半以降金融政策等の引締めスタンスを強めていることから、その効果の一部が現れているためとみられる。また、需要項目別でみても、07年通年では純輸出の寄与度は高まる中、政府の抑制策もあって投資の寄与度はやや低下する一方、好調に推移した消費の寄与がやや高まったことから、2年ぶりに消費の寄与が投資の寄与を上回った。消費者物価上昇率は、07年8月以降は同6%以上の高い伸びを続け、07年通年でも同4.8%と政府目標の同3%を超えた。消費者物価上昇の主因は、疫病や飼料価格の上昇に伴う豚肉価格の高騰、国際商品価格の高騰による食用油等の上昇といった食品価格の上昇であるが、足元ではエネルギー価格等の食品以外の価格にも上昇の動きがみられる。(都市部)失業率は03年以降ほぼ横ばいで推移している。

中国の主要経済指標

<2008年の経済見通し>
  2008年の経済成長率は、「経済の過熱の防止」と「全般的なインフレへの転換の防止」という、「2つの防止」を達成すべく実施されている一連の政策の効果と、世界経済の減速の影響を受けて、07年と比較するとやや鈍化し9%台と見込まれる(民間機関25社の平均9.8%(08年5月時点))。下方リスクとしては、アメリカ経済を中心とした世界経済の減速が予想以上に大きいものとなる場合、中国経済もさらに減速する可能性もあり、減速の程度によっては、過剰資本の問題が顕在化し、企業収益の悪化や不良債権の増加等によって経済が不安定化し、一段の減速を招くリスクもある。また、物価上昇が食品以外の価格や賃金に波及することによってインフレ期待が高まり、スパイラル的な物価上昇につながるリスクにも注視が必要である。

<財政金融政策の動向>
   財政政策をみると、2007年度の財政収支は707億元(GDP比0.3%)と若干の黒字となった。08年度は▲2,300億元(同▲0.9%)の赤字と見込まれる。全国人民代表会議(08年3月)においては、穏健な財政政策を維持するとしており、歳出については、三農問題の解決のほか、社会保障・教育・医療衛生等の民生問題等に重点を置くとされた。
  金融政策については、07年は金融政策の転換がみられた。07年半ばからの消費者物価上昇の加速を受け、金融政策のスタンスを示す表現をこれまでの「穏健な」金融政策から段階的に変更し、12月には「引締め」へと転換した。こうした中で07年初以降、貸出及び預金基準金利を6回、預金準備率を16回引き上げている。
  為替政策についても、07年秋以降、中国当局はインフレ期待を安定化させるために為替政策を用いることを表明し、金融政策と協調する形で人民元レートの柔軟性を拡大させている。実際、ドル安もあって07年秋以降、ドルに対する人民元レートは増価ペースを速めており、08年5月30日時点では6.9420元/ドル(05年7月の切上げ後16.8%、08年初比5.2%の増価)となった。ただし、ドルに対する人民元の増価幅は、各国通貨のドルに対する増価に比べて必ずしも大きいとはいえないため、円やユーロに対してはむしろ減価傾向にある。


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