2 カナダ Canada |
<2007年の経済>
2007年は、通年で2.7%の成長となり、年後半に減速傾向がみられたものの、おおむね堅調に推移した。カナダ・ドルの増価やアメリカ経済の減速の影響により純輸出がマイナスの寄与を続けた一方、良好な雇用・所得環境を背景に個人消費が堅調に推移したことが景気を支える要因となった。年前半は、個人消費が好調であったことに加え、4〜6月期以降は設備投資がプラスに転じ、景気を下支えした。年後半は、個人消費の伸びが緩やかになったことや、カナダ・ドル高やアメリカ経済の減速の影響により純輸出が大幅に落ち込んだことから景気は減速した。さらに、中古住宅販売の減速による民間住宅投資の伸びの鈍化も影響したとみられる。また、アメリカのサブプライムローン問題に起因する信用収縮懸念の高まりにより、8月には非銀行系ABCP(資産担保コマーシャル・ペーパー)が償還凍結状態に陥るなど、金融資本市場においても混乱がみられた。
消費者物価上昇率は、エネルギー価格の上昇が続いているものの、07年は前年比2.2%と政策目標圏(1.0〜3.0%)内で推移し、足元でも低い伸びとなっている。
一方、失業率は、07年は6.0%と過去30年で最低値を記録し、足元でも低水準で推移している。
<2008年の経済見通し>
2008年は1%台の低い成長が見込まれる(OECD見通し1.2%(08年6月)、IMF見通し1.3%(08年4月時点)。民間機関20社の平均1.6%(08年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(07年11月時点2.5%)に比べて大幅に下方修正されている。なお、08年1〜3月期は純輸出がプラスに転じ、内需は順調な拡大が続いたものの、自動車産業の在庫調整により、在庫投資が大幅なマイナスとなったことから、前期比年率0.3%減とマイナス成長となった。
今後成長を支える要因としては、原油や商品価格の高騰による、エネルギー産業を中心とした企業収益の増加から設備投資が堅調に推移することや、低水準の失業率といった環境の下、家計所得の安定的な増加に伴い個人消費が堅調に推移することが挙げられる。一方、下方リスクとして、アメリカ経済の減速やカナダ・ドルの過度の増価による輸出の鈍化、国際的な金融資本市場の混乱の長期化・深刻化による景気の下振れリスクなどが挙げられる。
<財政金融政策の動向>
2008年度予算によると、07、08年度の財政状況については、収支はほぼ均衡するものと見込まれている(1997年度以降連続)。これによると、08年度の歳出は前年度比2.3%増の2,396億カナダ・ドル、歳入は民間部門の経済成長見通しが下方修正されたことから同1.1%減の2,419億カナダ・ドルと見込まれており、依然、歳入が歳出を上回るとされている。しかしながら、景気の動向次第では、収支は赤字に転じる可能性もある。こうした中、政府は11年度までに純債務残高をGDP比25%にするという目標を掲げているが、現在のところ目標は達成される見込みである。
カナダ中央銀行は、経済の減速を受け、景気を下支えするために、07年12月以降08年4月まで計4回、1.50%の利下げを実施し、政策金利(オーバーナイト・レートの誘導目標)を3.00%とした。その後、6月の金融政策会合ではインフレに対する懸念から据置きを決定した。6月の政策決定後の声明では、「4月(前回会合)以降の経済情勢は想定の範囲内であったが、インフレの見通しはやや上振れした」とし、「エネルギー価格の高騰が続けば、総合物価上昇率は年内に3%を上回るであろう」と予想している。その上で、「現在の金融政策は需給をバランスさせ、2%のインフレを達成するのに適度に緩和的である」としており、インフレの上振れリスクと下振れリスクの両方を注視すると述べている。