目次][][][年次リスト

第2章 2008年の経済見通し


第3節 世界経済の減速の影響を受けつつも景気拡大が続くアジ ア

2.内需の成長が景気の下支えとして期待されるアジア

  中国以外のアジア経済(北東アジア、ASEAN各国)も、07年は中国、アジア域内、ヨーロッパ向け輸出が比較的堅調に推移したほか、良好な雇用環境を背景に内需も底堅く推移したため、景気拡大が続いた(第2-3-18図)
  07年の経済成長を四半期別にみると、製造業のバイオメディカル部門で生産が大幅に減少したシンガポールでは10〜12月期に大きく減速したものの、その他主要なアジア諸国においては、年後半にかけておおむね経済成長率が高まった。
  輸出はいずれの地域においても総じて増加傾向が続いている(第2-3-19図)。主要輸出先である中国とアメリカ向けの輸出動向をみると、中国向け輸出は比較的堅調であるのに対し、アメリカ向け輸出は鈍化している(第2-3-19図)
  輸出が堅調に推移する中、生産も年後半にかけて増加が続いた(第2-3-20図)。ただし、韓国及び台湾の主力輸出品目であるIT関連財の出荷・在庫バランス(出荷の前年比−在庫の前年比)の動向をみると、07年半ばから後半にかけて出荷の伸びが在庫の伸びを上回ったものの、08年に入ってからは、韓国では半導体を中心に在庫の伸びが出荷の伸びを上回り、在庫調整局面に入りつつあるように見受けられ、台湾でも、出荷の伸びは堅調なものの、在庫の伸びが高まっている(第2-3-21図)

アジア経済の今後の見通しと堅調な内需の持続性

  08年のアジア経済の見通しについては、輸出が世界経済の減速の影響を受け鈍化すると見込まれるが、民間消費や固定資産投資を中心に内需の堅調さは持続するとみられ、07年の成長からはやや減速するものの、引き続き景気拡大は続くとみられる。
   ただし、アジアでは、輸出依存度の高い国が多く、今後、アメリカを始めとした世界経済が予想以上に減速する場合には、輸出の鈍化による所得・収益環境の悪化等から、国内経済全体に影響が波及する可能性もあるため、その動向には留意する必要がある(第2-3-22表及び次節参照)
  景気の下支えが期待される内需に関して懸念されるのは、国際商品市況の高騰等による物価上昇である。アジア各国では、既に食品、エネルギー価格を中心に、消費者物価上昇率が高まっている(第2-3-23図)。物価上昇が消費や投資といった景気を下支えしている内需に与える影響が懸念される。
  また、実質経済成長率の産業別寄与をみた場合に、07年では金融仲介業や不動産業の寄与が拡大しており、潤沢な流動性の下で、金融取引等の活況が内需を押し上げていた面もある。今後、国際的な金融環境の変化によって、投資家の投資行動が冷え込み、こうした取引の巻き戻しが発生すれば、内需を抑制することにもなりうるため、注視していく必要があろう(第2-3-24表)


目次][][][年次リスト