<2006年の経済>
2006年の経済成長率は7.9%となり、05年の6.6%を上回る高成長となった。外需が年前半の成長をけん引したものの、その寄与は年後半にかけて縮小した。貿易統計から主力輸出品であるIT関連財をみると、一部製品で近年の海外への生産拠点移転の影響を受けたものの、年前半は二桁台で増加するなど好調に推移した。しかし、年後半にかけて半導体産業における世界的な在庫調整等の影響を受け、伸びが鈍化した。一方、内需は設備投資の増加や良好な雇用環境を背景とした民間消費の堅調な増加のほか、低迷を続けていた建設投資も回復し、景気を下支えした。
<2007年の経済見通し>
2007年の経済成長率は5〜6%程度になると見込まれる(政府見通し4.5〜6.5%(07年4月時点)、民間機関26社の平均5.3%(07年4月時点))。民間機関の見通しは、半年前(06年10月時点5.2%)と同程度となっている。
年前半に見込まれるIT関連財の世界的な在庫調整や価格引下げ圧力によりIT関連財輸出の増勢が弱含むことや、7月に施行される商品・サービス税率引上げ後の内需鈍化の可能性等が懸念されるものの、他方で良好な雇用環境を背景とした民間消費の増加等が見込まれる。また、産業別では、バイオメディカル等の非エレクトロニクス分野の生産増や、金融・観光分野等サービス産業の成長が景気を下支えすることが期待される。
<財政金融政策の動向>
財政政策については、2007年3月、07年度予算が可決された。歳出は前年度比8.0%増の330億シンガポール・ドル、歳入は同7.9%増の323.6億シンガポール・ドルとなり、後述するGSTクレジット等の特別移転支出金等を勘案したベースでの財政収支は6.9億シンガポール・ドルの赤字を見込んでいる。また、政府は、商品・サービス税(GST)を07年7月1日より現在の5%から7%へ引き上げ、法人税を08年課税年度(07年中の所得に対して適用)より現在の20%から18%へ引き下げるなどの大規模な税制改正を表明した。政府は、GSTの引上げは将来の支出増に備えたもので、この引上げに伴い増加する国民負担軽減のため、今後5年間で総額40億シンガポール・ドルを一時金(GSTクレジット)として国民の所得等に応じて支給するとしている。また、法人税の引下げは海外から投資を呼び込み、雇用創出につながるとしている。
金融政策については、04年4月以降、シンガポール通貨庁(MAS)は物価上昇圧力を抑制するため、シンガポール・ドルの名目実効為替レートを小幅で緩やかな上昇とする方針を維持しており、07年4月に発表された半期経済報告でも、同政策の維持が確認されている。なお、MASは07年7月のGST引上げが07年、08年の消費者物価上昇率をそれぞれ0.4〜0.6%ポイント押し上げると見込んでいるが、各種減免措置によりその影響は緩和され、07年の消費者物価上昇率は0.5〜1.5%との見通しを示している。