<2006年の経済>
2006年の経済成長率は前年比5.9%と、05年の同5.2%から加速し景気は拡大した。引き続き個人消費、民間投資等の内需の高い伸びが成長をけん引した。個人消費は家計所得の増加や雇用環境の安定から堅調に増加し成長を支えた。民間投資は、高水準の設備稼働率や第9次マレーシア計画(06〜10年)を踏まえた景気の先行きへの期待感から高い伸びとなった。公的投資については、06年は第9次マレーシア計画の初年のため、インフラ整備を中心に大幅に増加した。一方、外需をみると、パーム油、天然ゴム等の一次産品の輸出は好調であったものの、輸出全体の約4割を占めるIT関連財が年末にかけて鈍化した。
物価動向については、年前半にガソリン、軽油の燃料価格及び電力料金の引上げの影響がみられ、消費者物価上昇率は前年比4%前後の上昇となったが、年後半には同3%台前半まで低下した。
<2007年の経済見通し>
2007年の経済成長率は、5〜6%程度の成長になると見込まれる(政府見通し6.0%、民間機関9社の平均5.4%(07年4月時点))。
景気を下支えする要因としては、物価上昇の落ち着きや雇用環境の安定を背景に個人消費が堅調に推移することや、第9次マレーシア計画の進展や政府の投資優遇政策等により公的投資や民間投資が増加することなどが期待される。一方、下方リスクとしては、リンギ高の進行によるさらなる輸出の鈍化が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政政策については、2006年度より第9次マレーシア計画が実施され、知的集約型経済への移行等を目指し、政府の積極的な措置や民間資金の活用(PFI)等によりビジネス環境の整備や人的資源の開発等を進めることとしている。具体的な支出分野をみると、農村振興やインフラ整備を目的とした経済分野と、知的集約型社会への移行のための人材育成を目的とした教育分野に重点的に支出されている。また、07年度では法人税率を27%に引き下げるほか、07年3月には、(1)不動産取引に対するキャピタルゲイン課税の撤廃、(2)一部地域への投資優遇策、(3)外為取引規制の緩和(4月1日施行)等を公表し、国内外からの民間投資の促進を図っている。財政赤字は06年度はGDP比3.5%となった後、07年度は同3.4%が見込まれている。
金融政策については、政策金利であるオーバーナイト金利は物価上昇を背景とし05年11月、06年2月及び4月に0.25〜0.30%ポイントの利上げが行われたが、以降は据え置かれており、07年4月時点で3.50%となっている。