<2004年の経済>
2004年の経済成長率は、6.1%と15年ぶりに高い伸びを示した。海外出稼ぎ労働者からの送金額の増加や年前半の好調な農業生産に伴う農業従事者の所得増加から、消費が前年比5.9%増と堅調に推移した。輸出については、全体の7割を占めるエレクトロニクス製品が好調に推移したことから拡大した。生産面からみると、農林水産部門においては主力作物である米やとうもろこしの生産が大幅に増加し、同4.9%の増加となった。一方、工業部門は、食品製造、電気機械、運輸設備等の大幅な増加に加え、建設業が前年の公共事業抑制の反動から同5.3%の増加となった。サービス部門でも運輸・通信・倉庫業および金融業を中心に好調に推移し、景気拡大に寄与した。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は、4%半ば程度となる見込みである(政府見通し5.3〜6.3%、民間機関9社の平均4.6%(2005年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点4.3%)
に比べ、上方修正されている。
成長を支える要因としては、消費を中心とした内需の堅調さ、海外出稼ぎ労働者からの送金の好調の維持、個人向け融資の伸び等が挙げられる。
下方リスクとしては、世界経済の減速による輸出の鈍化や、緊縮目標達成のために計画されている増税、2004年6月から始まったアメリカの利上げを受けた政策金利の引上げ、原油価格高騰の継続により物価が上昇し、消費への悪影響等が懸念される。
<財政金融政策の動向>
財政は1997年まで黒字を維持していたが、アジア通貨危機の影響から、98年以降赤字が続いている。政府は支出の抑制を図る一方で徴税制度を整備し、税収増の強化に努めるなど、財政赤字削減に取り組んでいる。その結果、2003年度に引き続き、2004年度についても財政赤字額は1,861億ペソ(GDP比4.3%)に縮小し、政府目標である1,971億ペソを下回った。これは、大口納税者に重点を置いた脱税防止プログラムが効力を発揮したこと、2003年11月に2007年度までの時限措置として一部の品目に対する輸入関税が2〜5%程度引き上げられたこと等がある。政府は2005年度の財政赤字目標額を1,800億ペソ(GDP比3.6%)としており、2010年までに財政収支の均衡を図る中期的な計画を進めている。その中で8項目の税収増加策が発表され、タバコ・アルコール税及び税収管理強化のための成功報酬制度が2005年から実施されるが、今後、他の政策の早期実施が望まれる。
金融政策については、政策金利である翌日物借入金利及び貸出金利は、2002年3月以降各々7.0%、9.25%であったが、2003年7月にともに0.25%ポイント引き下げられ6.75%、9.00%となり、92年以来11年ぶりの低水準のまま据置きとなっている。