<2004年度の経済>
インド経済の特徴として、農業の比重の高さが挙げられる。GDPに占める農業の比重が約4分の1、就業者数では全人口の6割弱と大きいため、安定的な農業生産が、堅調な経済発展のためには依然として不可欠な状況になっている。90年代半ば以降、特にソフトウェア輸出産業の伸びが拡大しており、今後も引き続き拡大が期待されている。安価な人件費を背景に、バックオフィス・コールオフィス等のサービスや、人事・経理等のアウトソーシング業務が同産業の成長分野となっている。
このような中、2004年度の経済成長率は、6.9%となる見込みである(政府推定値)。
2004年度は、前半の降雨量の減少の影響で農業部門が停滞し、成長を鈍化させる懸念があったが、後半には十分な降雨量があったことから、安定した農業生産が見込まれる。また、引き続きソフトウェア産業等サービス部門が好調であること、輸出の増加や、好調な内需を背景に、製造業部門の生産が2003年度よりも好調となることなどから、景気は堅調に推移すると見込まれる。
<2005年度の経済見通し>
2005年度の経済成長率は、6%後半となる見込みである(民間機関7社の平均見通し6.7%(2005年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点6.7%)と同程度になっている。下方リスクとしては、現在政府が進めている規制緩和等構造改革が遅れることによる外国からの投資の停滞等が考えられる。
<財政金融政策の動向>
財政政策をみると、2005年度予算が、雇用創出、貧困撲滅、教育・医療政策、農村開発、インフラ整備等を重点項目として、2004年8月に採択された。財政赤字のGDP比(目標値)は、4.4%(2003年度は目標値5.6%、実績4.6%)に設定されている。また、2004年7月に財政責任法が施行された。同法は政府に対して、2007年度までに予算の経常赤字をゼロとすることを義務付けるものであり、政府は2004年度から経常赤字の削減率をGDP比で最低0.5%とし、財政赤字も同様に0.3%削減しなければならないとしているなど、財政赤字削減を進める方針が示されている。
しかし、州政府、連邦直轄地の連結でみると、財政収支はGDP比で10%を超えて推移しており、政府の歳出削減分を利払い費が上回っているため、中央政府のみならず歳出削減努力に加え、州政府の赤字削減努力も必要となってくると思われる。
金融政策は、2003年度にとられた低金利政策を継続し、産業活性化に主眼を置くものとみられる。ただし、引き続き原油価格高騰に伴う原材料価格の上昇等により、インフレ圧力が高まることも予想されるため、インフレ動向に留意した金利政策が必要となる。