<2004年の経済>
2003/2004年度(2003年7月〜2004年6月)の経済成長率は3.6%となった。2004年前半まで過熱していた住宅投資は、年末に実施された利上げの影響等により沈静化した。しかし、失業率が90年以来の低水準(2004年12月5.1%)となるなど、雇用情勢の改善がみられたことや、消費者マインド等が良好であることから個人消費を中心として内需が堅調に増加し、成長を支えた。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は、3%程度になる見込みである(政府見通し3.0%(2004/2005年度)、民間機関25社の平均2.7%(2005年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点3.1%)から下方修正されている。成長を支える要因としては、好調な企業部門を背景に、さらなる雇用情勢の改善が見込まれることや、依然高い水準を保つ消費者マインドから、今後も消費の堅調な伸びが期待されることが挙げられる。
下方リスクとしては、原油価格の高騰による経済への影響や、公定歩合の追加引上げを見込んだ住宅投資の減速が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政収支は97/98年度以降4年連続で黒字を達成していたが、2001/2002年度は9.8億豪ドル(GDP比0.1%)の赤字となり、2002/2003年度以降は黒字が続いている。2003/2004年度は、法人税収が増加したことなどから当初見込額46億豪ドル(GDP比0.6%)を大幅に上回る80億豪ドル(GDP比1.0%)の黒字となった。2004/2005年度については当初24億豪ドル(GDP比0.3%)の黒字を見込んでいたが、良好な経済環境から引き続き税収増が見込まれることから、2004年12月に発表された中期見通しにおいて、62億豪ドル(0.6%)の黒字へと上方修正された。
政府純債務残高は近年減少しており、2003/2004年度末には234億豪ドル(GDP比2.9%)と当初見込額260億豪ドル(GDP比3.2%)を下回った。2004/2005年度末については当初247億豪ドル(GDP比2.9%)を見込んでいたが、中期見通しでは197億豪ドル(GDP比2.3%)とさらに減少することが見込まれている。
2004/2005年度の予算の特徴としては、所得税減税、家族支援策が挙げられる。所得税減税が中・高所得者を対象とする一方で、家族支援策は中・低所得者を対象としている。2004年7月1日以降に出産した女性に対し、新生児一人当たり一律3,000豪ドルの出産手当の支給や託児所の増設、出産後に女性が社会復帰する際の報酬等待遇の改善等、今後5年間で192億ドルが家族支援策に充てられる見込みである。
金融政策については、オーストラリア連邦準備銀行が、2005年3月にキャッシュレートの誘導目標水準を0.25%ポイント引き上げ、5.50%とした。同行は今回の利上げの理由として、14年間以上にわたる景気拡大による生産能力の限界と、原油をはじめ原材料価格及び賃金コストの上昇を背景とした向こう2年に及ぶインフレ懸念を挙げている。