<2004年の経済>
2004年の経済成長率は前年比7.1%となり、2000年の8.9%以来の高成長となった。年前半は輸出が好調だったことから、8%前後の高い成長となったが、年後半は原油価格の高騰や、電子関連産業の輸出の落ち込みから伸びは緩やかになった。消費は前年比10.1%増の高い伸びを示し景気を下支えした。年後半に原油価格の高騰や政府の財政再建策による物品税の引上げが行われたことで物価は上昇傾向にあるが、金利が低く抑えられていることから耐久消費財を中心に消費は堅調に推移している。投資は前年に引き続き伸び悩んでおり、固定資本形成は前年比3.1%増にとどまった。民間投資は国内外の需要が堅調だったことから大幅に拡大したが、公共投資が前年に比べ減少したことから、投資全体の伸びは緩やかとなった。輸出は、前年比20.5%の大幅増となった。これは最大の輸出品である電機・電子製品の輸出が拡大したこと、パーム油、原油、天然ガスの価格が上昇したことが主な要因となっている。また、輸入も生産に必要な中間財や資本財の輸入が増加したことにより、同25.8%増加した。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は、5%程度の成長になると見込まれる(政府見通し6.0%、民間機関9社の平均5.1%(2005年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点5.2%)と同程度になっている。
成長を支える要因としては、低金利が続いていることから、耐久消費財を中心に消費が引き続き堅調に推移すると見込まれる。
下方リスクとしては、年前半にかけてITサイクルが調整局面にあることから、輸出の50%以上を占める電気・電子製品の生産が落ち込むことが予想される。また2005年3月以降、外国人不法就労者の摘発を強化したことから建設業や製造業を中心に労働力不足が発生しており、一部では工場の閉鎖が起きていることから、生産が鈍化するおそれもある。
<財政金融政策の動向>
アブドラ政権の下でマレーシアは財政健全化政策を進めている。2004年度の財政赤字は、経済の好調とあいまってGDP比4.3%となり、政府が目標としていた同4.5%よりも縮小した。マレーシア政府は歳出削減を進めるなど、財政赤字の削減を進めており、2005年度については同3.3%まで縮小する計画を立てている。
為替レートはアジア通貨危機後の1998年9月以降、1米ドル=3.8リンギに固定するペッグ制を維持している。しかし、近年貿易収支、経常収支の大幅な黒字が続いていることや、2004年後半からアジア諸国の通貨がドル安に推移していることから、ドルペッグ制を続けるマレーシア・リンギが他のアジア通貨に比べ割安となり、輸入コストが高くなっているとして、ドルペッグ制の見直し観測が高まっている。マレーシア政府は現在のところ通貨政策の変更は行わないことを繰り返し表明している。
金融政策については、2004年4月に政策金利をオーバーナイト政策金利に改めて以降、2.7%のまま据え置きが続いている。