<2004年の経済>
2004年の経済成長率は、6.1%となり2003年に比べ伸びは緩やかになったものの、高い成長を維持した。これは、生産や建設投資が前年に引き続き好調だったことが主な要因である。一方、消費は鳥インフルエンザと南部の治安問題、年後半からの原油価格の高騰による物価上昇の影響から、非耐久消費財の伸びが前年に比べ緩やかになった。一方で耐久消費財は自動車の売り上げが過去最高になるなど堅調に推移した。貿易については、輸出の占める割合が高い財の生産が好調だったことから、輸出の伸びが前年比21.8%増となった。一方、輸入も資本財や消費財の輸入が増加したことから、同26.6%の高い伸びを示した。そのため貿易黒字は前年より約25億ドル減少した。
なお、2004年12月26日に発生したスマトラ島沖大地震による津波は、タイの代表的観光地プーケット等に甚大な被害を及ぼした。この津波による観光業の被害は約300〜400億バーツ(GDP比約0.5%)とみられている。しかし、生産設備等への被害が無かったことや、今後復興関連の建設需要が見込まれることを総合すると、タイ経済に与える影響は限定的とみられている。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は5%程度になると見込まれる(政府見通し4.5〜5.5%、民間機関9社の平均5.1%(2005年5月時点))。民間機関の見通しは半年前(2004年10月時点5.9%)から下方修正されている。
成長を支える要因としては、自動車関連産業を中心に民間投資が引き続き伸びていることに加え、政府の新たなインフラ整備計画により、公共投資が今後増えることが予想され、投資が経済の牽引役になると見込まれる。
下方リスクとしては、スマトラ島沖地震による津波により観光業が被害を受けたことから、観光客の減少により観光収入に悪影響がでるおそれがある。またかんばつと原油価格の高騰から食品、エネルギーを中心にインフレが進行していることに加え、金利が上昇していることから、消費が減速するおそれがある。
<財政金融政策の動向>
タイでは2005年2月に総選挙が行われ、与党タイ愛国党が圧勝した。これによりタクシン首相は2期目の政権に入った。総選挙前の2005年1月に、政府は新たなインフラ整備計画(メガプロジェクト)を発表した。今回のインフラ計画は運輸、エネルギー、不動産を中心に、4年間で1.4兆バーツ(GDP比約22%)を投資する。このインフラ計画の資金調達について、タイ政府は財政負担を抑えるため、国内外からの借入れによって資金の7割を賄う計画である。
金融政策については、原油価格の高騰を受けインフレが進行していることから、政策金利である14日物レポ金利を2004年8月以降段階的に引き上げており、2005年6月時点で政策金利は2.5%である。為替レートは2004年11月以降増価基調で推移し、2005年1月から3月中旬にかけて1米ドル=38.5バーツ台で推移したが、その後は減価し、5月末時点で1米ドル=40.6バーツとなっている。