<2004年の経済>
2004年の経済成長率は、4.6%となり、2004年初の時点での政府見通しの5%程度に達しなかった。99年から導入されたクレジットカード利用優遇策に対する反動として生じた家計債務問題の解消に時間を要していることなどから、2004年においても消費は低迷が続いた。しかしながら、世界的な景気回復を背景にIT関連製品等を中心とした輸出が急速に拡大し、生産も好調となったことから、景気は輸出を主要な牽引力として回復した。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は2004年より若干減速し、4%前後となる見込みである(政府見通し5%程度(2005年1月時点)、民間機関29社の平均3.9%(2005年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点4.7%)から下方修正された。これは年後半にかけて、消費が幾分改善すると見込まれるものの、設備投資も含めた内需の本格的な回復には時間がかかるとの見方が多いことや、世界経済の緩やかな減速を背景に、輸出の鈍化も見込まれることなどによる。
懸念材料として、アメリカや中国の景気動向及びIT市況調整の状況によっては、IT関連製品を中心としたそれらの国々への輸出の伸びの鈍化の程度が大きくなる可能性があることが挙げられる。また、原油価格が足下で高止まりしていることや、ウォン高が加速していることなどから、輸出に影響を及ぼす可能性も指摘されている。また最近では、生産拠点の中国・東南アジア等へ移転する企業が引き続き増加するなど、製造業に空洞化の動きがみられることや、地政学的リスクの存在等不安定な状況も存在していることも懸念材料として挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政政策については、2003年以降、景気対策を中心とした内容となっている。2004年7月には、主に雇用創出(約5万5,000人分)や貧困層への支援、信用保証機関や中小企業の支援、公共建設投資の拡大等を目的に補正予算が編成されたが、2005年についても、同路線を継承している。項目として、2005年は社会福祉関連(社会保障、少子化対策、若年失業対策)への支出が前年比14.4%と大きく増加している。
しかしながら、税収が伸び悩む中で、赤字国債発行総額は、2004年の2.5兆ウォンから6.8兆ウォンに増加しており、99年の10.4兆ウォン以来の発行額となるなど、2004年に引き続き、健全な財政運営に懸念を残す内容となっている。
金融政策では、景気対策の一環として、2004年8月と11月にコールレートの誘導水準を連続してそれぞれ0.25%ポイントずつ引き下げ、同水準を史上最低水準の3.25%として以来、同金利水準を据え置いている。2004年8月と11月の利下げの具体的な理由として、韓国銀行は主に消費、設備投資等の内需の回復が遅れていることや、原油価格の高止まりを挙げ、着実な景気回復のためには、財政・金融両面での景気刺激策を引き続き実施していくべきとの見方を示している。現状でも景気刺激策としての低金利政策のスタンスを基本的に維持している。ただし、消費者物価の動向をみながら柔軟な金融政策を図る、としている。