目次][][][年次リスト

3 中 国      People's Republic of China

中国経済のこれまで

<2004年の経済>
  2004年の経済成長率は9.5%となり、アジア通貨危機以降で最も高い伸びとなった。主に固定資産投資が経済成長を牽引したが、輸出や消費も堅調に増加した。固定資産投資については、2004年初頭から鉄鋼、セメント、アルミ等といった一部業種において見受けられた投資過熱懸念に対し、直接規制や金利引上げ等のマクロコントロールが実施された。この結果、都市部固定資産投資は2004年1〜3月期は前年同期比47.8%増加したが、2004年全体では27.6%まで伸びが低下した。外貨準備高が年全体で51.3%増加したにもかかわらず、マネーサプライ(M2)は、年初には前年同月比20%前後で推移していたものが、年全体では14.6%と伸びが低下するなど、当局による介入の効果が表れているものとみられる。消費者物価上昇率は、天候不順等により食料品価格が大幅に上昇したこと等を背景に、年初にプラスに転じ、年央には5%台に達したが、食料品価格の動向が落ち着きを示してきたことなどから、年末には2%台まで低下した。都市部失業率は年全体で4.2%と2003年からほぼ横ばいで推移している。

中国の主要経済指標

<2005年の経済見通し>
  2005年の経済成長率は、8%台になる見込みである(政府目標8%前後、民間機関29社の平均8.7%(2005年5月時点))。依然投資過熱やインフレへの懸念が払拭されないとして、当局は、引き続きマクロコントロールを強化するとしている。このため、2005年後半には、一層の投資引締めの強化が打ち出される可能性があることに加え、世界経済が前年に比べると減速することから輸出の伸びが鈍化し、景気の拡大が緩やかなものとなる可能性も指摘される。年後半には、IT市場の調整の終了が見込まれることから輸出が増加し、年後半には景気が再加速すると見込まれる。全国人民代表者会議(2005年3月)では消費主導の成長への切り替え及び農政重視の姿勢が示されたが、農村の平均所得は2,622元とようやく都市の最低所得階層(2,590元)にならぶ程度であり、全人口の約6割を占める農村部において大幅な消費拡大は見込めない。このため、消費の裾野が著しく拡大することは期待できず、依然として投資牽引型経済成長が続くと考えられる。

<財政金融政策の動向>
  2004年の財政赤字は当初予想されていた3,198億元をやや下回り3,192億元(GDP比2.5%)となった。これは一部業種の投資の急激な伸びによる企業収益の増加と物価上昇により税収が増加したことなどが寄与している。2005年は赤字削減のため、建設国債発行額を前年よりも300億元削減し800億元発行することとしている。全国人民代表者大会(2005年3月)で報告された「2005年度国民経済・社会発展計画」では、1.マクロコントロールを強化・改善し、安定的に高い経済成長を維持、2.免税措置の前倒し実施や補助金支給を盛り込んだ農業支援、3.資源浪費型の経済成長パターンを転換し省資源及び環境保護を推進、4.地区間のバランスの取れた発展促進、5.国有企業改革等の諸改革の推進、6.就労と社会保障の拡充、人民の生活水準と質の向上等の目標が掲げられている。
  金融政策においては、投資過熱を抑制するため、数度にわたり引締め政策が実施された。中国人民銀行は2004年3月に中央銀行貸出基準利率を0.63%ポイント引き上げ、3.24%から3.87%(1年物)とした。また、4月には預金準備率を自己資本比率等の財務状況に応じて段階的に引上げを行い、過剰融資の抑制を図った。さらに10月には、9年ぶりに市中貸出し金利を0.27%ポイント引き上げ、5.31%から5.58%(1年物)とした。


目次][][][年次リスト