<2004年の経済>
2004年の経済成長率は、2.8%となり、前年の2.0%に引き続き景気が拡大した。年前半は、雇用の増加と家計所得の伸びによる好調な消費や、主要輸出品目である原油や非鉄金属等の資源価格の高騰による企業収益拡大を背景に、投資が好調で、1〜3月期は前期比年率2.4%増、4〜6月期は同4.5%増と堅調に推移した。しかし、年後半になりカナダ・ドルの対ドルでの増価傾向が続き、7〜9月期に前期比4.0%、10〜12月期に同7.1%増価した。アメリカはカナダの最大の貿易相手国であり、輸出依存度の高いカナダにとって、カナダ・ドル高は輸出への影響が大きく、2003年10〜12月期以降回復傾向にあった輸出が2四半期連続してマイナスとなった。その結果、7〜9月期で前期比年率2.9%増の成長、10〜12月期も同1.7%増の成長にとどまった。
<2005年の経済見通し>
2005年は3%程度の比較的堅調な成長が見込まれる(IMF見通し2.8%(2005年4月)、民間機関25社の平均2.8%(2005年5月時点))。
成長を支える要因としては、エネルギー製品等の商品市況の高止まりや投資の増加、雇用や所得の堅調な推移による消費の増加が挙げられる。
下方リスクとして、カナダ・ドルの対ドル増価の影響による輸出の減少等が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
2005年2月に公表された2005年度予算案によると、2004、2005年度の財政状況については97年度以降連続している収支均衡が引き続き維持される見込みである。
2005年度予算案の内容としては、温室効果ガスの排出削減に向けた追加支出のほか、個人・法人所得税の減税策、国防費の増額、育児支援策の拡充等が盛り込まれ、歳出は前年度比1.9%増の1,964億カナダ・ドルとなる見込みである。一方、好調な経済を反映して歳入も同2.3%増の2,004億カナダ・ドルとなり、収支均衡の維持が見込まれている。
政府はこうした財政収支均衡の方針を今後も維持するとしており、2009年にはGDPに占める累積赤字の割合は30.6%まで低下することが見込まれている。
カナダ中央銀行は、経済成長の加速に伴うインフレ予防を目的に、2004年9、10月にオーバーナイト金利を0.25%ポイントずつ引き上げたが、その後は2.5%に据え置いている。この背景として、2004年後半以降のカナダ・ドル高の進行、及びこれを背景とした成長率の低下が挙げられている。カナダ中央銀行は据え置きに際して、自国通貨の上昇で外需による経済成長が抑制されるなか、内需を押し上げる必要性に言及したものの、金融緩和政策を解除していくという方向性には変化はないとの見方を示し、長期的には利上げ基調にあるとしている。