<2004年の経済>
2004年前半の経済成長率は、1〜3月期の前期比年率4.5%から、4〜6月期の同3.3%へと成長率の一時的低下がみられた。この要因として、原油価格の高騰や、これを背景とした急速な利上げへの懸念が起こったことを背景に、企業、家計の先行き不透明感が広がり、雇用の増加ペースの鈍化や消費の伸びの低下につながったことが挙げられる。
年後半に入っても原油価格の上昇は続き、史上最高値の更新を続けたが、こうした高水準のエネルギー価格にもかかわらず物価上昇率は安定的に推移し、FRB(連邦準備制度理事会)による利上げも緩やかなものになるとの見方も定着したことなどにより、雇用の増加幅、消費の伸びは持ち直し、成長率も高まった。この結果、2004年全体としては、4.4%の高成長となり、非農業雇用者数はITバブル期の1999年以来となる約220万人の増加となった。
こうした景気拡大の持続を背景に、経常収支赤字の拡大が続き、2004年は6,659億ドル(GDP比5.7%)と過去最高となり、2004年の財政収支赤字もGDP比3.6%となった。これらを背景に、ドルは減価傾向で推移した。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は前年よりやや低下し、3%台半ばとなる見込みである(民間機関59社
平均3.4%(2005年5月)、政府見通し3.6%(2005年2月)、議会予算局3.8%(2005年1月))。民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点3.5%)と比較し、ほぼ横ばいとなっている。物価上昇率は安定的に推移するとみられる。
下方リスクとしては、年初から再び上昇を始め、高水準にある原油価格が、消費者や企業のマインドを低下させることや、利上げ局面にあるにもかかわらず低水準で推移した長期金利が、インフレ期待の急速な台頭により急上昇することなどが挙げられる。
<財政政策の動向>
2004年度のアメリカ連邦政府の財政収支赤字は過去最大の4,123億ドル(GDP比3.6%)となったが、景気拡大の持続による税収増により、2004年2月時点の見通し(5,210億ドル)は下回った。
2005年度は、行政管理予算局(OMB)によれば、4,266億ドルの赤字と過去最大を更新する見込みである。ただし、2005年2月に行われた予算教書演説では、2006年度予算においては、国防、国土安全保障を除く裁量的支出を前年比1%程度削減することなどにより、財政収支赤字は縮小し、3,310億ドルとなる見込みである。なお、同演説においては、2009年度までの今後5年間で財政収支赤字を半減(上述2004年2月時点見込みとの比較)させる方針を示している。
<金融政策の動向>
FRBは、2004年6月以降、フェデラル・ファンド・レート誘導目標水準を0.25%ポイントずつ、計8度引き上げているが、現行の金融政策は依然緩和的であるとしている。ただし、高水準のエネルギー価格を背景とした物価上昇率の緩やかな上昇を背景に、2005年5月のFOMC(連邦公開市場委員会)声明においては、「インフレ圧力はここ数ヶ月高まっており、価格決定力は一層明確になっている」としており、インフレへ警戒の姿勢を示している。
今後の見通しとしては、フェデラル・ファンド・レート誘導目標水準は、2005年5月現在の3.00%から、2005年末には4%程度まで引き上げられるとみる向きが多い。