<2004年の経済>
2004年の経済成長率は、8.1%となった。4〜6月期は前年のSARS反動で12.1%と高い伸びとなり、その後も旺盛な内需を反映して高い伸びを維持した結果、通年でも過去4年間で最も高い伸びとなった。内需は、住宅市場の回復を受けて、2001年以降マイナスであった小売売上金額の伸びがプラスに転じた。また2004年に香港を訪れた人が延べ2,000万人を突破し、SARSの影響を受けた2003年から40%増と大幅に増加したことも内需を下支えした。中国本土との間で締結された経済貿易緊密化協定(CEPA)については、2001年から貿易赤字となっていた地場輸出については2004年には黒字にプラスに転じた成果が見られた。ただし当初期待された製造業拡大については成果がみられず、失業率も6%台で高止まりしている。物価上昇率は、1999年以降、5年連続でマイナスとなっていたが、2004年に入り、景気が徐々に回復したことを受けで7月以降プラスとなった。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は、4%台半ば程度(香港政府見通し4.5〜5.5%、民間機関27社の平均4.6%(2005年5月時点))となり回復傾向が続くものと見込まれる。
SARSの反動や低金利を背景に急増した消費の伸びも低下するとみられる。またCEPAについては、2005年1月1日より、新たに529品目がゼロ関税対象となるものの、世界経済の拡大のペースが緩やかになることや、中国当局が一層のマクロコントロールを講じることが見込まれることから、景気回復を牽引してきた輸出の伸びは鈍化すると見込まれる。他方、主要な産業の一つである観光業については2005年3月から天津市、重慶市の住民に対し香港への個人旅行が許可されること、さらに2005年9月よりディズニーランドがオープンすることから、観光客の増加が見込まれる。
<財政金融政策の動向>
2004年度の財政収支は、景気回復を反映し所得税や収益税収が伸びたため、1兆1,953億香港ドル(GDP比0.9%)の黒字となった。
2005年度の歳出は、前年度比4.3%増の2,872億香港ドルを予定し、教育、社会福祉、保健、治安維持等に充てる予定である。その一方で、空港管理の民営化や鉄道会社の合併合理化による歳出削減を図る。歳入面では、新税の導入や既存の税率の引上げは行わず、55〜59歳までの父母を扶養する給与所得者に対する手当の導入や児童手当の引上げが検討されており、財源については債券の発行で賄うことを予定している。消費税(GST)の導入の可能性は引き続き調査するとしている。
金融政策については、香港金融管理局はカレンシーボード制を採用しているために2004年の連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利引上げに追随して政策金利(基準貸出金利)を11、12月、2005年2、3、5月にそれぞれ0.25%ポイントずつ引上げ、5月末には4.50%とした。なお、薫建華が1996年12月より任命されていた香港特別行政区長官を2005年3月12日に辞任し後任は曽蔭権政務官が代理を務めている。