<2004年の経済>
2004年の経済成長率は8.4%となり、前年の1.1%から大幅に上昇し2000年以来の高い成長となった。年前半はアメリカ向けを始めとしたIT需要や欧米向のバイオ医薬関連の輸出が好調だったことに加え、2003年のSARSによる落ち込みの反動等から、1〜3月期は前年同期比7.5%、4〜6月期は同12.5%上昇するなど2000年以来の高い伸びとなった。しかし、年後半になると国外のIT需要の伸びが緩やかになったため、成長を支えているIT関連の生産や輸出が鈍化したことから、拡大はやや緩やかになった。
投資は製造業を中心に前年比8.4%増となり、4年ぶりにプラスに転じた。消費は生産や輸出の好調により個人所得が増加したことが寄与し、前年比12.4%増となった。また、雇用は失業率が年前半は横ばいが続いていたが、年後半から低下するなど改善が続いている。消費者物価は年後半からの原油高騰等の影響からインフレが進んだが、伸び率は前年比1.7%にとどまっており、安定している。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は4%程度になるものと見込まれる(政府見通し2.5〜4.5%(2004年5月時点)、民間機関28社の平均4.0%(2005年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点4.5%)に比べ下方修正されている。
前年の急成長の反動に加え、世界のIT需要が年前半に減速することが予想されていることから、電子関連産業を中心に生産や輸出に悪影響が出ることが予想される。しかしながら年後半からは世界のIT需要が回復すると予想されているものの、成長の伸びは前年に比べ緩やかになるとみられる。
<財政金融政策の動向>
2005年2月18日、シンガポール政府は2005年度の予算案を発表した。2004年度の財政収支は個人所得税の税収が増加したことなどから、黒字になると見込まれている。2005年度は、歳出が前年度より3.7%増、歳入が同1.6%増となり、前年度の黒字を組み入れた補正後の財政黒字を2.1億シンガポール・ドルと見込んでいる。前年度に引き続き歳出抑制に努めており、国防省以外の省庁の削減枠については、上限を現在の2%から5%に拡大する。歳入面では、所得税の最高税率を2007年までに22%から20%に引き下げることを発表した。この減税による経済効果は実施後10年間で33億シンガポール・ドルと見込んでいる。歳出面では、金融、物流、観光等を重点育成分野とし、具体的には新たな資産市場の育成や不動産投資信託の活性化、観光地の再開発等を重点的に支援することを表明した。また、教育費、医療費の負担や老後資金の貯蓄等に関連する補助制度も打ち出された。
金融政策について、政府は外国為替制度を政策手段としている。2004年4月以降、名目実効為替レートは小幅で緩やかな上昇に誘導する方針が維持されている。そのためシンガポール・ドルは増価基調で推移しており、2005年5月末時点で1米ドル=1.6665シンガポール・ドルとなっている。