<2004年の経済>
2004年の経済成長率は1.6%となり、2003年よりは持ち直したものの、ユーロ圏全体の成長率を下回り、景気回復は弱いものとなった。年前半は、世界的な景気回復により海外からの受注が好調に増加するなか、輸出及び生産が増加し外需主導による緩やかな成長となった。しかし、年後半は、ユーロ高の影響等により輸出の勢いが弱まるとともに、内需の回復が遅れるなかで、景気の回復は緩やかになった。外需の増加や企業収益の改善が内需に波及しておらず、低金利にもかかわらず投資の継続的な増加には至っていない。失業率は高止まり、また雇用環境の改善があまりみられないことから消費は弱い状態が続いた。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は、約1%となる見込みである(民間機関26社の平均0.9%、2005年5月時点)。民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点1.8%)から下方修正された。外需が引き続き成長の牽引役となると予想されものの、世界経済の成長がやや鈍化することから、輸出の伸びは緩やかになるとみられる。回復の遅れていた内需については、緩やかに持ち直す見通しである。資金調達環境の改善から投資は緩やかに回復すると見込まれる。労働市場改革の成果が徐々にあらわれてきており、既に2004年末から雇用は増加傾向に転じていることなどから、消費は今後の持ち直しが期待されるものの、企業のリストラや高水準の失業率を背景に、
消費の本格的な回復には時間がかかると見込まれる。
失業率については、2005年1月から施行された労働市場改革「ハルツIV」により、失業統計の集計方法が変更され、これまで生活保護を受給していた者のうち就業能力のある者は失業者としてカウントされることとなったため、失業率は年初に上昇した。今後年半ばまで高止まり、その後低下し始める見通しである。
下方リスクとしては、原油価格の高騰やユーロ高が続いた場合、輸出や生産に悪影響を与え、内需の回復がさらに遅れる懸念がある。また、雇用情勢が好転しない場合、先行きへの不透明感から消費が一層抑制されるおそれがある。
<財政政策の動向>
2004年の財政赤字はGDP比3.7%となり、2002年から3年連続で「安定と成長の協定」で定めた遵守基準(3%)を超過した。政府は、引き続き歳出削減や構造改革により構造的財政赤字を改善する姿勢を示しており、2004年12月に欧州委員会に提出した安定プログラムにおいても、2005年には財政赤字を同3%以内に抑えるとしている。他方、欧州委員会は、2005年の財政赤字を同3.3%と見通しており、財政の長期的安定のため、引き続き構造改革に取り組む必要性を指摘している。
2005年1月には2000年より実施してきた「税制改革2000」の最終段階として、総額68億ユーロ(GDP比約0.3%)の所得税減税が実施された。これにより、最高税率が45%から42%と、また最低税率が16%から15%となった。
また、2005年3月、シュレーダー首相は議会で演説し、現在進めている構造改革プログラム「アジェンダ2010」の追加景気刺激策として法人税減税案を発表した。法人税の税率(国税分)を現行の25%から19%に引き下げることでドイツ産業の競争力強化、投資促進を目的としている。ただし、歳入中立を堅持するため、代替財源については企業の損失繰り越し控除割合の縮小や株主への配当課税の引上げ等で対応する計画となっている。首相は、2005年秋までに5賢人委員から具体的なレポートを提出するという形で作業を進め、2006年に実施する意向を示している。