目次][][][年次リスト

16 フランス           French Republic

<2004年>
フランス経済のこれまで

<2004年の経済>
  2003年後半から回復局面に入り、2004年も回復が続き経済成長率は2.1%となった。7〜9月期は一時的な調整局面に入ったものの、年間を通して内需を中心とした力強い回復となった。政府による個人消費促進策(製造業者や小売業者への働きかけによる店頭価格引き下げ、生前贈与の非課税枠設定、企業内貯蓄一部取り崩しの許可)や住宅ブームによる資産効果を通して、消費が力強い伸びとなった。世界経済の回復から輸出は増加したが、内需の力強さから輸入も大幅に増加し、純輸出はマイナスとなった。また、低金利や企業収益の回復から企業設備投資も増加が続いている。

<2005年の経済見通し>
  2005年は2%程度の経済成長が見込まれる(政府見通し2〜2.5%、民間機関26社の平均1.9%(2005年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点2.3%)に比べて下方修正されている。景気回復を支える要因としては、ガラン法(流通業者に仕入れ値以下で
フランスの主要経済指標
の販売を禁止する法律)が改正される予定であることや、政府の個人消費促進策の継続、低金利を背景とした住宅市場の活況等による消費の増加が挙げられる。また、低金利を背景として、企業設備投資の改善が続くことが挙げられる。
  下方リスクとしては、原油高の継続や不安定なユーロ相場等が企業景況感を悪化させ、設備投資の回復が遅れる可能性がある。また、雇用、所得環境のさらなる悪化が消費者マインドに悪影響を与え消費の伸びを抑制する可能性がある。

<財政政策の動向>
  2004年の財政収支は、景気の回復により税収が増加したことから、前年のGDP比4.2%からやや改善し、同3.7%の赤字となったが、3年連続してユーロ圏の「安定と成長の協定」で定める3%の上限を超えた。さらに、政府債務残高も同65.6%となり、財政収支と同様に同協定で定める60%の上限を超えた。
  経済財政産業省の発表した2005〜2006年経済見通し(2005年3月)では、2005、2006年の財政赤字を各々GDP比2.9%、2.7%と見込んでおり、同協定の基準を遵守する見通しとなっている。一方で、同年の政府債務残高は同66.1%、66.4%と同協定で定める60%の上限を上回るとしている。2004年12月に欧州委員会へ提出した「安定プログラム」の中で、2005年は歳出の抑制(3年連続で実質伸び率ゼロ)を行うことで、「安定と成長の協定」で定める財政赤字の基準を遵守できる見込みとなったため、EU経済財務相理事会(ECOFIN)は2005年1月、同協定違反に対する制裁措置を一年延長した上で停止した。
  2005年5月29日の国民投票においてEU憲法批准が否決されたことを受け、ラファラン首相は辞任し、代わってドビルパン首相が就任した。EU憲法否決の最大の原因として失業率が10%を超える深刻な雇用情勢の問題があり、首相は新政権の最大の課題として雇用政策を掲げている。首相は施政方針演説の中で、2006年度予算において雇用対策のために45億ユーロの追加支出を行う方針を示した。また、同演説の中で、2006年に行う予定であった所得税減税については、財政赤字がGDP比3%を上回って続く中でその余地がないとして、中断すると表明した。


目次][][][年次リスト