<2003年の経済>
2003年の経済成長率は、6.7%の増加となり景気は引き続き拡大している。SARSの影響により4〜6月期の成長率は前年同期比5.8%とやや鈍化したが、SARSが早期に制圧されたことにより、7〜9月期以降は、物価の安定を背景とした低金利政策の継続から個人消費や民間投資が引き続き増加した。民間投資では、建設投資が引き続き拡大した。公共投資は10〜12月期に新国際空港ビルの整備や地方の電気設備の整備等から大幅に増加した。また、世界経済の回復が輸出を支え、品目別にみると自動車・自動車部品、電子関連、天然ゴムが高い伸びを示した。国別にみると、アメリカ向け輸出が伸び悩む一方、中国向け輸出が拡大した。
<2004年の経済見通し>
景気は拡大が続いており、7%程度の成長になると見込まれる(政府見通し7.7〜8.1%、民間機関9社の平均7.1%(2004年4月時点))。民間機関の見通しは半年前(2003年10月時点5.7%)から上方修正されている。
成長を支える要因としては、低金利、所得の増大や企業収益の増加、雇用拡大を背景として、個人消費や民間投資等内需が引き続き景気拡大を牽引すると見込まれる。
下方リスクとしては、このところアメリカ向け輸出が弱含んでいること、鳥インフルエンザの流行が鶏肉関連産業及び観光産業へ与える影響等が懸念される。
<財政金融政策の動向>
タイでは通貨危機後増加した公的債務を処理し、財政を健全化することが重要な課題となっており、政府は、歳出面では無駄を省き、歳入面では減税を柱とした内需刺激策や景気拡大により税収を増加させている。
政府は、2月に2005年度予算(2004年10月〜05年9月)の大枠を決定した。それによると、歳出総額は11,700億バーツとなっており、通貨危機以降初の均衡予算となっている。一方、2004年度予算(2003年10月〜04年9月)については、景気拡大による税収増から補正予算を編成し、当初予算の1,355億バーツ増である11,635億バーツとなっている。また2004年度の財政赤字を999億バーツ(GDP比1.6%)と見込んでいるが、税収の伸びは加速しており、実際の赤字額は政府見込みを大幅に下回るとしている。
金融政策については、政策金利である14日物レポ金利を2003年7月に引き下げて以来、1.75%のまま据え置いている。為替レートは2003年9月のG7以降一時1ドル38.94バーツまで増価し、中央銀行による投機的なバーツ取引制限措置が実施され39バーツ台後半まで値を戻したが、その後も増価基調で推移している(4月中旬現在1ドル=39.0バーツ)。