<2003年の経済>
2003年の経済成長率は0.4%となり、前年に引き続き低い伸びとなった。2003年前半の2四半期連続マイナス成長の後、7〜9月期は前期比年率1.8%成長となったものの、10〜12月期は同0.0%となり、景気の回復が遅れている。これは、ユーロ高やドイツ等ユーロ圏の弱い内需の影響により輸出が減少したこと、企業の労働コスト負担が増大するなかで設備投資が減少したことなどによる。雇用面では、労働市場改革の結果、雇用者数が増加傾向にあり、2003年を通じて失業率は低下し続けた。消費者物価上昇率は、企業の労働コスト負担の増大や、サービス業でのマージンの上昇等の影響から、前年比2.6%と前年に引き続き高い伸びとなった。
<2004年の経済見通し>
2004年の経済成長率は1%台前半となり、景気は緩やかに回復する見込みである(民間機関7社の平均1.3%、2004年4月時点)。民間機関の見通しは、半年前(2003年10月時点1.7%)から下方修正された。また、欧州委員会の見通しも、1.2%(2004年4月時点)と、半年前(1.5%)から下方修正された。食品大手企業の不正経理事件や2004年3月のスペイン列車爆破テロの影響により消費者信頼感が落ち込んでおり、景気回復の遅れが懸念される。成長を支える要因としては、世界経済の回復に支えられ、輸出の回復が見込まれること、競争力強化のための投資促進税制の導入により企業の設備投資の増加が期待されること、雇用環境の改善が個人消費にプラスの効果を与えることなどが挙げられる。賃金上昇率の伸びの低下や企業の労働コスト負担の低下により、消費者物価上昇率は緩やかに低下し、2004年後半には安定すると見込まれる。
下方リスクとしては、機械、衣料製品分野での中国を始めとしたアジア諸国との競合によるイタリア産業の国際競争力の低下や、ユーロ高が、回復の鍵を握る輸出に悪影響を与える可能性がある。
<財政政策の動向>
2003年の財政赤字はGDP比で2.4%となり、「安定と成長の協定」に定められた3%以内に収まっている。2003年9月に策定された2004年予算案においては、160億ユーロの財政赤字解消策、50億ユーロの景気浮揚策(国際競争力向上政策やインフラ整備等)を打ち出し、2007年には財政均衡が見込まれている。しかし、赤字解消策のうち、構造的措置が少なく脱税特別免除措置等の一時的措置への依存が多い、政府の経済見通しが楽観的であるなどの問題点が指摘されている。
年金改革については、政府は、保険料の払い込み期間が40年を超えるか(現行は35年)、もしくは男性で65歳、女性で60歳に達するまでは年金を受け取れないなどとする年金改革案(2008年導入予定)を2003年10月に発表した。労働組合が改革案に反対し数々のゼネストを行うなか、政府は当初計画案から譲歩する姿勢を示唆するなど、年金改革の実現を目指している。