<2003年の経済>
2003年の経済成長率は、通年では前年比3.3%増となった。4〜6月期はSARSの影響で前年同月比0.5%減と落ち込んだが、年後半には急速な回復をみせた。この回復は、中国本土との経済貿易緊密化協定(CEPA)締結によるところが多い。2003年7月に中国本土から香港への個人旅行が解禁となったことで、本土からの旅行者が売上増に貢献し、また、SARSの反動で香港住民の消費意欲も好転し、落ち込んでいた民間消費は年後半より増加に転じた。10〜12月期は企業景況感の改善から、落ち込んでいた民間投資も増加に転じた。また、輸出も本土向けを中心に堅調に増加している。
物価をみると、2003年の消費者物価上昇率はマイナス2.6%となり、5年連続でデフレが続いている。年後半には雇用環境は緩やかに改善したものの、SARSの影響もあり2003年の失業率は7.9%と過去最高となった。
<2004年の経済見通し>
2004年の経済成長率は、5.5%程度(香港政府見通し6.0%、民間機関27社の平均5.5%(2004年4月時点))となる見込みである。民間機関の見通しは、半年前(2003年10月時点3.8%)に比べて上方修正されている。
消費マインドの改善と消費税(GST)導入を見送ったこと、引き続き中国本土からの旅行者が増加することなどが消費を押し上げる要因となり、民間消費は緩やかに増加する見込みである。また、CEPA施行により、2004年1月1日より273品目の対中国向け輸出関税が撤廃されるため、対中国向け輸出はさらに増加し、世界経済の回復を受け、その他の国向けの輸出入も活発になる見込みである。
<財政金融政策の動向>
財政は、返還以来財政収支の赤字が続いており、2003年度には490億香港ドル(GDP比4.0%)となる見込みである。2003年度に赤字削減策として新税の導入が予想されていたが、財政赤字が予測を下回ったため、さらなる増税、新税の導入は見送られた。
2004年度香港政府予算案では、公務員数の削減などにより段階的に公的支出を削減し、2008年度までに収支を均衡させる目標をたてた。
2004年度の歳出は前年度比2.3%増の2,587億香港ドルを予定しており、教育、社会福祉、衛生、治安維持等にあてる予定である。また、2004年度中に政府は200億香港ドルを上回らない政府債券を発行し、インフラ整備等公共投資を増加させる予定である。
歳入増加策としては、給与所得税の標準税率と累進税率、非法人の事業所得税率、そして資産所得税率を上げることで130億香港ドル増を予定している。消費税(GST)の導入の可能性は引き続き調査するとしている。
金融政策は特に変化がなく、金融緩和が続いている。