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15  ドイツ    Federal Republic of Germany

ドイツ経済のこれまで

<2003年の経済>
 2003年の経済成長率はマイナス0.1%となり、93年以来のマイナス成長となった。年前半は、2002年から続いたユーロ高の影響によって輸出が減少し、また6月に旧東ドイツ地域で金属産業労組のストライキが行われた結果、生産、設備投資が減少した。このため、2003年4〜6月期まで3期連続マイナス成長となり、景気は後退した。企業マインドは6月末に2004年に所得税減税が前倒しされることが決定された後、小売業を中心に改善し、さらに株価が上昇基調となったことや世界経済の回復の影響等から年末にかけて改善を続けた。年後半は世界経済の回復力が強まったことによって、海外からの受注が増加し、輸出主導で景気は持ち直した。さらに10〜12月期には、設備投資が2000年7〜9月期以来初めてプラスに転じた。失業率は2003年を通じて上昇基調を示した。雇用情勢の悪化から消費者マインドは冷え込み、消費は低迷した。

<2004年の経済見通し>
 2004年の経済成長率は、1%台半ば程度となる見込みである(欧州委員会1.5%、民間機関26社の平均1.6%(2004年4月時点))。欧州委員会の見通しは、半年前(2003年10月1.6%)に比べて下方修正されている。
 世界的な景気回復の恩恵を受けて外需の増加が期待されるなか、消費の伸び悩みによる内需の回復の弱さから低い成長にとどまると予想される。
 成長を支える要因としては、2003年10〜12月期に増加に転じた設備投資が引き続き増加することが挙げられる。資金調達環境が改善するなか、世界需要の高まりが生産の増加につながると期待されるため、企業はこれまで先送りしてきた更新投資を行うことが期待される。
 下方リスクとしては、2003年秋から2004年2月にかけて再加速したユーロ高の影響により、輸出や生産の伸びが鈍化する可能性が挙げられる。さらに、構造改革に対する先行き不透明感の広がりが企業の投資意欲の減退につながる懸念がある。また、年金改革などに関する議論が消費者マインドをさらに悪化させ消費の低迷を長引かせる可能性がある。

ドイツの主要経済指標

<財政政策の動向>
 2003年の財政赤字はGDP比3.9%となり、2002年の3.5%に引き続き、「安定と成長の協定」で定めた遵守基準(3%)を超過した。
 欧州委員会は、2002年から3年連続で協定に違反する可能性が高いとし、2005年までにさらに必要な措置を講じるよう求める勧告案を採択した(11月18日)。これに対して、勧告案は回復の兆しがみえた経済に悪影響を与えるとし、ドイツはフランスとともに欧州委員会に反論した。11月25日に開催された経済財務相理事会(ECOFIN)では、勧告案は否決され、過剰財政赤字解消の手続は当面停止されることとなった。ドイツ政府は、歳出削減や構造改革により構造的財政赤字を改善する姿勢を示しており、安定プログラム(2003年12月提出、2004年1月改訂版提出)においても、2005年までには財政赤字を3%以内に抑えるとしている。他方、欧州委員会は、前提となる成長率見通しが楽観的であり、2005年まで4年連続で3%を上回る可能性があるとの評価を下している。
 2003年12月には構造改革プログラム「アジェンダ2010」の関連法案が成立し、マイホーム助成金の縮減、解雇保護制度の緩和、失業救済金と社会扶助の「失業給付金II」への統合(2005年より実施)、長期失業者への雇用斡旋の厳格化、手工業法制の改正等が決定された。
 「アジェンダ2010」における税制改革の一つとして、2004年1月から所得税減税が実施され、最高税率45%(それまでは48.5%)、最低税率16%(同19.9%)となった。減税規模は、当初予定されていたよりも半分(78億ユーロ)に縮小された。


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