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14  ユーロ圏    Euro Area

ユーロ圏経済のこれまで

<2003年の経済>
 2003年の経済成長率は、0.4%となった。2002年末から減速していた景気は、2003年前半においてさらに弱含み、4〜6月期まで2期連続でマイナス成長となった。主な要因には、2002年秋以降ユーロが対ドルで上昇を続けたため、輸出が減少し、主要な輸出企業の収益が減少したことが挙げられる。また、イラク戦争による企業マインドの悪化も重なり、生産、投資は減少した。年後半は、アメリカを始めとした世界経済の回復を受けて輸出主導でプラス成長に転じ、年末にかけて生産、投資が持ち直したことから景気は緩やかに回復した。
 物価は、おおむね安定基調にあり、総合消費者物価指数(HICP)上昇率は、欧州中央銀行(ECB)の「前年比2%を下回るが2%に近く」とする目標値の付近で推移している。ユーロ圏の失業率は、2001年を底に以後高まりを示し、2003年は8.8%となった。

ユーロ圏の主要経済指標

<2004年の経済見通し>
 2004年の経済成長率は、1%台後半程度となる見込みである(欧州委員会見通し1.7%、民間機関27社の平均1.8%(2004年4月時点))。欧州委員会の見通しは、半年前(2003年10月1.8%)に比べて下方修正されている。
 成長を支える要因としては、世界経済の回復を受けて輸出が増えることにより、生産、投資が増加することが挙げられる。なお、2003年末から2004年2月まで続いたユーロ高の影響により域外輸出の伸びは徐々に鈍化すると予想されるが、世界経済の回復が続くことによりユーロ高の影響はある程度相殺されることが期待される。
 下方リスクとしては、雇用情勢の厳しさから消費者マインドが冷え込み、消費が抑制される可能性がある。リストラ圧力は緩和しつつあり、全体の雇用環境は最悪期を脱したと考えられるものの、主要国で進展している年金改革などの行方によっては将来不安が一層強まり、消費者マインドのさらなる冷え込みにつながる可能性がある。また、2004年3月にスペインで起きたテロ事件や中東情勢の不安定化等による先行き不透明感の強まりが、企業マインドを冷え込ませ、投資を抑制させる可能性がある。

<金融政策の動向>
 欧州中央銀行(ECB)は、2003年6月に政策金利(短期買いオペの最低応札金利)を0.5%引下げ2.00%とし、ユーロ圏では戦後最低の水準となった。2004年に入りユーロの対ドルでの増価基調が一層強まったことや、個人消費が引き続き弱いことから、利下げ期待が強まったが、ECBは4月の理事会において、「金融政策が中期的な物価安定維持に沿っているとの判断は変わらない。」と述べ、政策金利を据え置いている。


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