<2003年の経済>
2003年は景気の拡大が続き、経済成長率は9.1%となり、97年以降で最も高い伸びとなった。一人当たりGDPも初めて1,000ドルを上回り、1,090ドルになった。好調な固定資産投資と輸出が成長を牽引し、小売売上も堅調に増加した。固定資産投資については、大幅な伸びが続くなか、鉄鋼、セメント等一部の業種では投資過熱感が強まり、また、都市部を中心に不動産投資も高い伸びとなった。輸出については、2001年末のWTO加盟以降、高い伸びが続いており、2003年は前年比37.1%と2002年を上回る高い伸びとなった。一方で、対中直接投資はSARSの影響で年後半は前年比で減少が続き、前年比1.4%増と小幅な伸びとなった。輸出の高い伸びを受け、鉱工業生産も増加を続け、前年比17.0%増となった。
消費者物価上昇率は、天候不順や穀物生産量の減少により食品価格が大幅に上昇したことでプラスに転じた。また、大都市を中心に不動産取引価格が上昇しており、投資の急増で原材料需要が高まり、原材料価格も上昇した。都市部失業率は4.3%と過去最高となっている。
<2004年の経済見通し>
2004年の経済成長率は、8%前後になる見込み(政府見通し7%前後、民間機関28社の平均8.3%(2004年4月時点))。民間機関の見通しは半年前(2003年10月時点7.2%)に比べて上方修正されている。
成長を支える要因としては、都市部を中心に所得環境の改善が続き、個人消費が堅調に推移するとみられるほか、輸出の増加を背景に、生産が引き続き拡大するとみられる。民間投資については、政府はマクロ・コントロール機能を強めるとしており、減速すると見込まれる。また、輸出については、2004年1月から輸出にかかる増値税還付率が引き下げられ、2003年末に駆け込み輸出があったため、2004年はやや伸びが鈍化する可能性があるものの、世界経済が回復基調にあるため、輸出入ともに高い伸びとなる見込みである。
<財政金融政策の動向>
2003年は全国の歳入歳出ともに初めて2兆元を突破した。歳入の伸びが歳出の伸びを上回ったことから、財政赤字幅は縮小し、GDP比2.7%となった。政府は2004年度の財政赤字目標を前年と同額の3,198億元とし、また、景気過熱を回避するため、建設国債を前年よりも300億元削減し1,100億元発行するとしている。国債は農村部におけるインフラ整備等に向けられる。国債は減額になったものの、今後も積極財政政策は行うこととしている。
2004年3月上旬の第10回全国人民代表大会における2004年度予算案では、財政支出の重点が(1)農業税率の引き下げ、農民への補助を通じて農業・農村・農民への歳出を増やすこと、(2)再就職補助金や社会保障システム整備等を行い、就職・社会保障への投入を増やすこと、(3)教育、医療衛生、科学技術、文化、スポーツなどの事業への投入を増やすこと、(4)都市部と農村部の所得格差拡大懸念から、とりわけ中西部地域への移転支出を増やすことなどに置かれている。金融政策に関しては、投資加熱を抑制するため、引き締め政策に転換している。中国人民銀行は3月25日から公定歩合を0.63%ポイント引き上げることとした。また、4月25日から預金準備率を0.5%ポイント上乗せし7.5%、さらに自己資本比率が低いなど財務状況の悪い金融機関には8.0%を適用し、過剰融資の抑制を図ることとした。