第2章 主要地域の経済動向(第3節)

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第3節 アジア経済

第1章でみたように、18年半ば以降、中国では米中貿易摩擦の影響がまず株価や通貨、製造業景況感の低下に現れ始め、18年末頃からは輸出の低下もみられるようになっている。こうした状況を受け、中国政府の経済運営スタンスには、景気の安定をより配慮する方向への変化がみられており、インフラ関連投資の伸びは下げ止まりがみられるものの、乗用車販売を中心に消費は鈍化傾向が続いている。

一方、アメリカでの政策金利引上げを背景に、18年8月にアルゼンチンやトルコで通貨の急落がみられ、インドネシアやインドでも、アジア新興国の中では比較的大幅な通貨下落を経験するということがあった。

本節では、中国経済の動向とインドネシアやインドの通貨下落の経験を振り返り、最後に、中国及びその他アジア経済の見通しと主なリスク要因を整理する。

1.中国経済の動向

17年以降、中国政府は、シャドーバンキング等に対する金融監督管理の強化、地方政府のインフラ投資の資金調達の適正化等、デレバレッジに向けた取組を一層強化した。18年に入ると、こうした取組の成果が、シャドーバンキングの縮小、インフラ関連投資の伸びの低下となって内需にも徐々に影響を与え始めるようになっていた。さらに、18年半ばから高まりを見せた米中貿易摩擦の影響もあり、中国では、景気は緩やかに減速している。

18年の実質経済成長率は、前年比6.6%となり、政府目標の6.5%前後を上回ったが、17年の同6.8%からは伸びが鈍化した。四半期別にみると、1~3月期前年比6.8%、4~6月期同6.7%、7~9月期同6.5%、10~12月期同6.4%と、徐々に伸びが鈍化している(第2-3-1図)。需要項目別にみると、消費の寄与は18年前半に高まった後、やや低下し、資本形成の寄与も7~9月期まで横ばいで推移した後、10~12月期に低下した。また、17年にはプラスに転じ成長に寄与した純輸出は、18年は、10~12月期を除きマイナスで推移した。財貿易をみると、輸入が輸出を上回る高い伸びとなったことから貿易黒字が縮小した。加えて、サービス収支赤字が拡大し、経常収支は、18年1~9月期に55億ドルの赤字に転じている。

第2-3-1図 中国の実質経済成長率

(1)財政・金融政策

(経済運営スタンスの変化)

18年3月の全国人民代表大会(全人代)では、財政政策については、「積極的な財政政策」、金融政策については、「穏健な金融政策の中立性を維持する」と、前年と同様の文言が示されていたが、18年半ば以降の米中間の貿易摩擦の高まりを受けて、中国政府の経済運営スタンスには、景気の安定をより配慮する方向への変化がみられる。

具体的には、7月23日の国務院常務会議では「外部環境の不確実性にしっかり対応し、経済の変動を合理的な範囲内に維持しなければならない」とされ、そのために財政・金融政策の役割をより一層発揮させるとの方針が示された。財政政策については「ばらまき型」の強い景気刺激策はとらないが「積極的な財政政策」をより積極的にするとされ、減税・税外の費用負担軽減1に焦点をあてるほか、全人代時に既に決定していた1.35兆元の地方特別債の発行を加速して建設中のインフラプロジェクトを推進する、とされた。また、金融政策については、中立の文言が削除され、「穏健な金融政策」を実施する、とされた。流動性供給については、全人代における「合理的安定の維持」から、「合理的余裕の維持」へと、緩和方向が示唆される表現への変化がみられる。さらに、7月31日の共産党中央政治局会議においては、インフラ分野の弱い部分の補強の取組に力を入れる方針等も示された。

こうした方針はその後の具体的な動きとなって既に現れ始めている。8月に中国財政部は地方特別債について、原則として9月までに18年の発行枠の8割以上を発行し、残りも10月に発行するよう地方政府に求めた。また、9月及び11月に輸出増値税の還付率引上げ、10月に個人所得税減税の一部実施などが行われている。金融政策についても、中国人民銀行は18年4月及び7月に引き続き、10月及び19年1月に預金準備率の引下げを実施した。

また、12月に開催された中央経済工作会議では、現在の経済情勢について、「外部環境が複雑で難しいものとなっており、経済が下押し圧力に直面している」との認識が示された。また、19年の経済運営について、「積極的な財政政策」、「穏健な金融政策」を引き続き実施し、「マクロ経済政策の反循環(カウンターシクリカル)な調整を強化する」、とされた。より大規模な減税・税外の費用負担軽減措置の実施や地方特別債の規模の大幅な増加等を具体的な政策例として挙げており、中国政府は引き続き経済の安定に向けて更なる取組を進めるものとみられる。

(18年以降の減税措置の実施)

18年3月の全人代では、企業の減税・税外の費用負担軽減に引き続き取り組み、1.1兆元以上の負担を軽減するとされた。また、3月及び4月の国務院常務会議において、増値税率2の一部引下げなど3項目の増値税軽減措置及び企業の研究開発や中小企業への支援を中心とする7項目の減税措置が、それぞれ決定された(第2-3-2表)。さらに、7月23日の国務院常務会議では減税・税外の費用負担軽減に力を入れるとされ、研究開発に係る企業所得税の優遇措置の対象拡大等が決定されたほか、9月及び11月に輸出増値税の還付率引上げが実施されるなど、18年は様々な企業向けの減税措置が実施された。また、18年8月に改正個人所得税法が成立し、19年1月からの施行に先立ち、改正内容の一部が10月から実施された。このほか、輸入関税について、5月に医薬品、7月に自動車・部品及び日用消費品、11月に工業品等を対象とした引下げが実施され、18年の輸入品全体の平均関税率は17年の9.8%から7.5%に引き下げられた(輸入関税の詳細については、第1章第2節 米中貿易摩擦の影響 参照)。

なお、中国財政部は、18年全体の減税・税外の費用負担軽減の規模は約1.3兆元となったとしており3、年初の方針から減税規模が拡大されている。さらに、19年に入っても、1月に、中小企業を対象とした新たな減税措置が決定・実施されている。

第2-3-2表 2018年以降の主な減税措置
(金融政策及び金融市場の動向)

金融政策については、18年は4月、7月、10月に預金準備率が引き下げられ、更に19年1月にも引下げが実施された(第2-3-3図)。流動性供給の規模は、18年4月約4,000億元、7月約7,000億元、10月約7,500億元、19年1月約8,000億元と拡大している。7月時にはデレバレッジの手段の一つとされている債務の株式化の促進が主な目的とされていたが、10月時には中小・零細企業、民間企業、イノベーション型企業に対する支援の度合いを向上させることを主な目的として掲げており、より景気の安定に配慮されていることもうかがえる。金融政策の運営状況を金融政策スタンスに対する市中銀行の評価でみると、17年以降50を下回って引締め気味に推移していたが、18年7~9月調査以降、大きく上昇して50を上回っており、緩和的なスタンスになっていることが確認できる(第2-3-4図)。

第2-3-3図 政策金利
第2-3-4図 市中銀行の金融政策スタンスに対する評価

また、社会融資総量 (フロー)をみると、17年以降、金融リスク防止の取組が強化される中、シャドーバンキングの一端である銀行貸出以外の貸付等は、18年春頃に減少に転じ、18年末まで減少が続いた。一方、銀行貸出については、18年半ば以降やや増加がみられ、預金準備率引下げもあり流動性のひっ迫が緩和されていることもうかがえる(第2-3-5図)。

中国では、中小企業や民営企業が銀行貸出を受けにくい状況があるとされており4、10月22日の国務院常務会議では民営企業の資金調達難緩和のため、債券発行による資金調達を支援する方針が示された。さらに、11月9日の同会議では中小企業に対する融資拡大に向けた取組方針が示されたほか、12月に中国人民銀行により中小企業・民営企業への貸出を支援するための新たな流動性供給手段として目標型中期貸出ファシリティ(TMLF:Targeted Medium-Term Lending Facility)が新設されるなど、中小企業や民間企業の資金調達支援策が相次いで公表されている。

なお、こうした緩和的な金融環境が中国の過剰債務問題のリスクを高める可能性があることにも留意が必要である。中国では、08年の4兆元の景気対策により実施された大規模なインフラ関連投資等を契機として、企業の債務が急拡大し、その後の景気減速で過剰債務問題が顕在化することになった経緯がある5。企業部門の債務をみると、16年4~6月期以降、引き続き高水準ではあるものの若干ながら低下傾向にあったが、18年に入りやや増加をみせている(第2-3-6図)。18年12月の中央経済工作会議では、「デレバレッジの基本路線を堅持し、金融市場の異常な変動と共鳴を防止し、地方政府の債務リスクを適切に処理する」との方針が改めて示されているが、金融安定化に向けた取組の進捗状況には引き続き注視が必要である。

第2-3-5図 社会融資総量(フロー)
第2-3-6図 民間非金融部門の債務残高・GDP比

(2)個人消費

(小売総額は伸びがやや低下)

18年の小売総額(実質値)の動向をみると、18年半ば頃から鈍化傾向が顕著となり、18年初の前年比8%台の伸びから、10月以降は5%台に低下している(第2-3-7図)。また、名目値では、18年は、前年比9.0%と、17年の同10.2%から低下し、03年以来の一桁台の伸びとなった。18年の消費の鈍化の主な要因として、中国国家発展改革委員会は、自動車の消費の減速を挙げており、小売総額(名目)の1.2%ポイントの伸びの低下のうち、自動車の消費が0.8%ポイント寄与したとしている6。また、消費環境側の要因として、(1)18年の実質可処分所得が昨年より低下したこと、(2)株式市場の変動により財産所得が伸び悩んだこと、(3)家計債務水準の上昇等により、消費性向がやや低下したことを挙げている。このように消費に鈍化がみられる中、中国政府は、19年1月29日に消費促進策を打ち出している(詳細は後述)。

第2-3-7図 小売総額

品目別の小売の動向を、データが公表されている一定規模以上の企業7における商品小売総額(名目値)でみると、シェアが最も高い自動車の伸びは、18年に入り、鈍化傾向を示している。特に、5月以降は前年比マイナスとなり、マイナス幅も拡大傾向となっている(第2-3-8図)。また、シェア3位の石油・関連製品は、世界的な原油価格の上昇基調を背景に10月まで二桁台の高い伸びで推移していたが、その後、原油価格の下落に伴い大きく伸びが低下している。なお、化粧品類でも18年半ばから伸びの低下がみられており、景気の鈍化を背景とした消費者マインドの低下が、自動車や化粧品類といった非必需品の消費に影響を及ぼした可能性が考えられる。

第2-3-8図 商品小売総額の内訳(名目値・一定規模以上の企業)

また、小売総額のうちインターネット小売は、18年後半は伸びに鈍化傾向がみられるものの、20%を超える高い伸びを維持している。小売総額に占めるシェアは着実に上昇をみせ、18年末には18.4%となっており、消費における存在感を増している(第2-3-9図)。

第2-3-9図 インターネット小売
(自動車販売台数は伸びが低下)

自動車販売の詳細を自動車販売台数(乗用車・商用車の合計、出荷ベース)でみると、18年半ばまでは、販売台数の大半8を占める乗用車が堅調に推移したほか、商用車も高い伸びで推移していた(第2-3-10図)。7月以降、乗用車の伸びがマイナスに転じるとともに商用車の伸びも大きく低下した。7月の自動車販売台数は全体でマイナスとなり、その後もマイナス幅は拡大傾向にある。この結果、18年の自動車販売台数は、前年比2.8%減となった9。中国汽車工業協会は、18年の自動車販売台数の減少の要因として、15年10月から17年末まで実施された排気量1.6リットル以下の小型乗用車に対する車両購入税の引下げ10の終了、中国経済の成長鈍化や米中貿易摩擦を受けた消費者マインドの低下等の影響を挙げ、また、短期的には引き続き大きな下押し圧力に直面しているとしている。

第2-3-10図 自動車販売台数

乗用車販売台数11をブランド国別12(前年比寄与度)にみると、アメリカブランド車は18年5月以降マイナス幅が拡大傾向にあり、米中貿易摩擦の高まりを背景に、アメリカブランド車の買控えが生じている可能性も考えられる(第2-3-11図)。ただし、18年7月以降、中国自主ブランドを中心に、他の多くの主要国ブランドでもマイナスとなっており、株価の下落や消費者マインドの低下が背景にあるともみられる。

第2-3-11図 乗用車販売台数(ブランド国別前年比寄与度)
(雇用は堅調なものの、所得の伸びはやや鈍化)

雇用情勢については、引き続き堅調となっている。都市部新規就業者数は18年9月時点で1,107万人となり、18年の目標(年間1,100万人)を達成したほか、都市部調査失業率13は、18年の目標である5.5%以内を下回り、5%近傍で推移している(第2-3-12図)。

第2-3-12図 都市部調査失業率

また、求人倍率は、16年半ば以降上昇傾向が続いており、特に17年末以降は過去最高の水準となっている(第2-3-13図)。内訳をみると、求人倍率が大きく上昇した17年後半から求人数の伸びが求職者数の伸びを大きく上回っており、需給のひっ迫がうかがえる。中国では、生産年齢人口が、11年にピークを迎えた後、減少に転じており、総人口に占める比率も11年以降低下しており、労働力の供給の減少による人手不足も背景にあるとみられる(第2-3-14図)。

第2-3-13図 求人倍率
第2-3-14図 生産年齢人口

他方、所得をみると、一人当たり可処分所得(実質)は、18年は6%台半ばで推移し、18年全体では前年比6.5%増となった。個人所得の伸び率を経済成長率とほぼ同じにするという18年の全人代で掲げられた政府目標は達成したものの、17年の前年比7.3%増からは伸びが低下しており、消費の下押しの一因となった可能性もある(第2-3-15図)。

第2-3-15図 一人当たり可処分所得(実質)
(消費者マインドは年半ばから低下したものの、持ち直し)

消費者マインドをみると、消費者信頼感指数14は、16年以降上昇傾向を続け、17年末頃から18年半ばまで高水準で推移していたが、6月以降低下がみられた(第2-3-16図)。6月は米中双方で追加関税措置を公表したことから株価の下落が加速した月にあたっており、こうした動きが消費者マインドに影響を及ぼし、また消費の鈍化の一因となったとみられる。11月以降は持ち直しの動きがみられるが、この背景には、10月に改正個人所得税法が一部実施されたこと(詳細は後述)、12月に米中首脳会談において追加関税率の引上げが留保されたことがあると考えられる。しかしながら、米中貿易協議の先行きはいまだ不透明であり、今後、再び消費者マインドに影響を与える可能性もある。

第2-3-16図 消費者信頼感指数
(家計債務は増加)

中国国家発展改革委員会では、18年の消費の鈍化の背景として、以上のような短期的要因の他に、家計債務水準の上昇の影響を指摘している。

18年末の金融機関の消費ローン残高は37.8兆元となっており、09年末の5.5兆元から約6.8倍と急速に増加している。消費ローン残高のうち、個人住宅ローンが18年末で68.1%と大半を占めている(第2-3-17図)。

第2-3-17図 金融機関の消費ローン残高

消費ローン残高の伸びをみると、15年半ばからの住宅価格の上昇に伴い、個人住宅ローンの伸びは17年初にかけて大きく高まっている。16年半ば以降、各地域で住宅購入時の最低頭金比率の引上げ等の不動産価格の抑制策がとられたことを背景に、17年半ば以降、個人住宅ローンの伸びは鈍化したが、17年以降は短期消費ローンで伸びが高まっている。

17年に短期消費ローンが急増した要因について、中国人民銀行15は、(1)一部の住宅購入者の支出が個人の負担能力を超えるものとなっており、消費ローンの利用により消費水準を維持する傾向があること、また、(2)一部の住宅購入者が消費ローンを利用して頭金比率の規制を回避していることを挙げている16。18年に入り、短期消費ローンの伸びも低下傾向にあるが、17年までの消費ローンの増加ペースの高まりによる家計債務の水準の上昇が、消費の伸びの鈍化に影響している可能性も考えられる。

(中国政府の政策対応)

消費の伸びに鈍化がみられる中、中国政府は、個人所得税の減税や消費促進策の発表等の政策対応を行っている。

中国政府は、18年3月の全人代において7年ぶりとなる個人所得税改革の方針を示し、8月に個人所得税法の改正が承認された。19年1月からの全面施行に先立ち、改正内容の一部が10月から実施されている。

主な改正点は以下の3つとなっている。第一に、賃金・給与所得の基礎控除額が、現行の月3,500元から、月5,000元(年6万元)に引き上げられた。第二に、控除項目が拡大され、現行の基本費用控除項目(年金保険料、基本医療保険料、失業保険料等の社会保険料や住宅積立金等)に加えて、子女教育費、重大疾病医療費、高齢者扶養費等の特別付加控除項目が設けられた。そして第三に、累進課税率の対象範囲が改定された。具体的には、これまでの分離課税から、一部所得(賃金・給与、役務報酬、原稿報酬、特許使用料所得)について総合課税を導入し、総合課税の累進課税率については、現行の賃金・給与所得税率と同様に7段階としたが、対象となる所得の区分を改定し、税率3~25%が適用される所得範囲が拡大した(第2-3-18表)。このほか、個人事業主等についても、5段階の全ての税率で対象となる所得範囲が変更され、低税率の対象となる所得範囲が拡大した。

第2-3-18表 累進課税率の比較

具体的な改正の効果としては、賃金・給与所得の基礎控除額が月3,500元から月5,000元に引き上げられることにより、都市部就業者に占める納税者の割合が44%から15%に低下し、国民の税負担は年間で約3,200億元軽減されることが見込まれるとされた。個人所得税法改正後の記者会見では、今回の改正は特に中間層以下の税負担を軽減することが強調された。なお、中国国家税務総局によると、一部先行して実施された18年10月には、賃金・給与所得への課税義務の対象外となった納税者は6,000万人を超え、減税効果は316億元に達したとされる。

さらに、19年1月29日、中国国家発展改革委員会、工業・情報化部、商務部等10部門は合同で消費促進策17を発表した。内容は、自動車、家電、農村部の消費向上等の6分野における計24項目の措置からなっている。具体的には、自動車では、旧排ガス基準である「国3」以下の基準の車両からの買換えに対する補助や新エネルギー車販売に対する補助、農村部での三輪自動車から3.5トン以下のトラックまたは乗用車への買換えに対する補助等となっている。また、家電では、省エネ家電、スマート家電の購入補助や高品質な家電製品(冷蔵庫、洗濯機、エアコン等8品目が対象)への買換えに対する補助等が挙げられた。この措置により、19~21年の3年間における省エネルギー・スマート家電の消費額は約7,000億元となるとの試算が示されている。なお、一部の補助については、条件を備えた都市において実施するとされており、全ての措置が全国で一律に実施されるものとはなっていない。

以上のとおり、消費の伸びは鈍化しているものの、中国政府による対応により一定程度下支えされることが期待される。ただし、消費者マインドには持ち直しがみられるものの、米中貿易摩擦の今後の行方によっては、再び下振れして消費を下押しする可能性もある。また、住宅ローンを中心とした家計債務の増加といった中期的な下押し要因が重なっている可能性もあり、今後の消費動向には注視が必要である。

(3)生産

鉱工業生産は、18年は、伸びがおおむね横ばいで推移した。業種別にみると、18年半ばから鉱業がプラスの伸びに転じる一方、製造業は伸びが鈍化基調となっている(第2-3-19図)。製造業の内訳をみると、18年7月以降、販売台数が前年割れしている自動車は、年半ばから伸びが急速に低下し、10月以降はマイナスの伸びとなっており、生産を下押ししている。他方、コンピュータ・通信その他機械は高い伸びを維持している。また、過剰生産業種とされる鉄金属加工業(鉄鋼等)についても、生産能力削減の目標達成18が順調に進む中、18年は伸びに高まりがみられた(第2-3-20図)。

第2-3-19図 鉱工業生産(付加価値ベース、実質)
第2-3-20図 鉱工業生産(付加価値ベース、実質):製造業内訳

また、近年、生産が活発化してきた高付加価値品の生産(数量ベース)をみると、新エネルギー車、産業用ロボット、集積回路のいずれも、17年の高い伸びの反動もあり、このところ伸びが鈍化している(第2-3-21図)。ただし、新エネルギー車については、19年から各自動車メーカーに一定比率の新エネルギー車の生産や輸入・販売が義務付けられたこともあり、今後も高い伸びが続くと見込まれる。

第2-3-21図 高付加価値品の生産(数量ベース)

以上のように、生産は全体としては堅調に推移しているものの、製造業の一部で弱い動きもみられる。今後、インフラプロジェクトの推進、消費促進策等の景気安定化に向けた中国政府の政策対応が生産を下支えすることが期待されるが、18年末頃からみられる輸出の伸びの低下が、影響してくる可能性もある。特に、米中間の貿易摩擦の先行きは依然不透明であり、今後の動向によっては、生産への下押し圧力が増す可能性もある。

(4)固定資産投資

固定資産投資(年初来累計)の伸びは、17年後半以降、低下傾向が続いていたが、18年秋頃に下げ止まりの動きがみられ、その後おおむね横ばいで推移している。内訳をみると、17年まで固定資産投資をけん引してきたインフラ関連投資は、17年末に伸びが前年比(年初来累計)20%を割った後、18年5月以降は一桁台の伸びで推移しており、固定資産投資全体の伸びを下押ししてきたが、10月以降、伸びは下げ止まっている(第2-3-22図)。また、製造業投資は18年初めを底に持ち直しており、不動産開発投資は18年初から10%近傍の伸びで堅調に推移している。

第2-3-22図 固定資産投資
(製造業投資は持ち直しの動き)

製造業投資は、17年以降、4~5%程度の伸びで推移していたが、18年初から持ち直しの動きがみられ、年後半には9%台まで回復している(前掲第2-3-22図)。

業種別にみると、ハイテク分野(電子部品やデバイス製造業等)が含まれるコンピュータ・通信等が二桁台の高い伸びを維持しており、産業用機械、汎用機械などでも伸びが回復している。過剰生産能力抑制や環境規制の対象である業種についても、非鉄金属加工 (アルミ等)、化学原料・製品は比較的低い伸びとなっているが、鉄金属加工(鉄鋼等)は、17年の大幅なマイナスの反動もあり伸びが高まっている。中国政府は、16~20年の5年間における鉄鋼の過剰生産能力削減目標を定めているが、17年までに目標の下限を達成する速いペースで進捗しており、17年の製造業投資の伸び悩みとその後の持ち直しにも一定の影響を与えている可能性も考えられる。また、環境保護が重要課題となる中で、シェアは小さいものの、廃棄資源総合利用が一時50%近傍と、最も高い伸びとなっている。他方、販売台数が前年割れしている自動車は18年半ばから伸びが低下傾向にある(第2-3-23図)。

第2-3-23図 固定資産投資(製造業・業種別)

なお、中国国家統計局は、イノベーションの推進と技術水準のアップグレードが製造業投資の回復にとって最大の原動力であるとしており、18年の企業に対する負担軽減措置をみると、研究開発に関するものが多く含まれていることから、製造業投資の持ち直しの動きを引き続き後押しすることが期待される。

ただし、米中間の通商問題による影響には留意が必要である。アメリカは、6月15日に、「中国製造2025」に関連する産業的に重要なテクノロジー分野を含む中国からの輸入品500億ドル分に25%の追加関税を課す旨を決定し、7月6日から340億ドル相当分、8月23日から160億ドル相当分に対し追加関税の賦課が実施された。これらの分野が多く含まれるコンピュータ・通信等の投資は高い伸びを続けてきているが、今後、米中貿易摩擦の影響が顕在化し、更に深刻化・長期化した場合には、製造業投資を下押しする可能性もある。

(インフラ関連投資の伸びは下げ止まり)

インフラ関連投資は、17年は20%近傍の高い伸びで固定資産投資をけん引したが、18年に入り伸びが大きく低下し、同年半ばには伸び率が1桁台まで低下した(前掲第2-3-22図)。その後、18年末にかけて伸び率は下げ止まり、おおむね横ばいで推移している。

中国国家統計局は、インフラ関連投資の伸びの低下について、比較対象となる前年の投資額が大きかったこと、地方政府のインフラ関連投資について合法性の審査の強化、基準に満たない官民パートナーシップ方式(PPP:Public Private Partnership)案件の整理、環境保護規制の厳格化等が実施されたことを指摘している19。中国財政部は地方政府の債務増加のリスクを防止する観点から、PPPを通じた違法な資金調達を抑制するため、17年11月に「PPPの総合情報管理の規範化に関する通知」を公表し、それに基づく取締りの結果、18年1~3月期から7~9月期にかけて、PPPの登録件数・登録額は低下してきた(第2-3-24図)。中国財政部は、18年9月に、これまでに2,148件、2.5兆元相当の案件の登録が削除されたと公表している。ただし、10~12月期には登録件数・登録額は小幅ながら増加しており、PPP案件の整理が一巡した可能性もあり、今後、持ち直しに向かうことが期待される。

第2-3-24図 PPP登録件数・登録額

18年に入りインフラ関連投資の伸びが低下する中、7月23日の国務院常務会議において、1.35兆元の地方特別債20の新規発行と使用を加速し、建設中のインフラプロジェクトの進捗をうながす方針が示された。また、31日に開催された党中央政治局会議では、インフラの弱点分野の補強に力を入れる方針が示された。これらを受けて、8月14日に、中国財政部は、「地方特別債の発行業務の加速に関する意見」を公表し、地方政府に対し、地方特別債の発行について、9月末までの累計発行額を原則として18年の発行枠の80%以上とし、残余額についても主に10月のうちに発行しなければならないとした。また、起債による収入についても滞留させず、速やかに使用することを求めた。

地方特別債の起債額をみると、10月までに1兆3,207億元が発行され(3月の全国人民代表大会で示された18年の発行枠は1.35兆元)、単月でみると8、9月に発行高が急増している(第2-3-25図)。こうした政策対応が、10月以降のインフラ関連投資の下げ止まりの動きに寄与したとみられる。

さらに、12月の全人代常務委員会では、19年3月に開催される全人代で19年の地方債務限度額が承認される前に、1月から1.39兆元の地方債を発行することが認められ、19年1月9日の国務院常務会議において、発行・使用を加速し、建設中のプロジェクトや重要プロジェクトを推進する方針が示されている。中国政府は、「ばらまき型」の強力な景気刺激策はしないとしており、インフラ関連投資は、今後急増することはないとみられるものの、緩やかに持ち直していくことが見込まれる。

第2-3-25図 2018年の地方特別債の発行高
(不動産開発投資はおおむね横ばい)

不動産開発投資は、17年に前年比(年初来累計)7%程度で堅調に推移した後、18年に入り伸びを高め、10%近傍の伸びで推移している(前掲第2-3-22図)。

不動産販売価格をみると、16年後半以降、各地域で不動産価格抑制策が実施されてきたにもかかわらず、18年半ばにかけて、前月比で上昇した都市は増加した。その後やや減少がみられるものの、引き続き高水準となっている(第2-3-26図)。都市別にみると、一級都市21では16年秋頃からおおむね横ばいで推移しているが、二級及び三級都市では、18年も、引き続き伸びが高まった(第2-3-27図)。

不動産販売面積をみると、16年後半以降、前年比伸び率は低下に転じ、18年はおおむね横ばいで推移した(第2-3-28図)。地域別では、一級都市の含まれる東部地域22ではマイナスでの推移が続いているのに対し、中部及び西部地域では、おおむねプラスで推移しており、需要が比較的強い様子もうかがえる(第2-3-29図)。ただし、中部及び西部地域でも18年初めをピークとして伸びに低下傾向がみられる。

第2-3-26図 不動産販売価格:前月比増減都市数
第2-3-27図 不動産販売価格
第2-3-28図 不動産販売面積
第2-3-29図 地域別不動産販売面積

不動産価格上昇の背景の一つとして、不動産在庫の解消の進展もあるとみられる。不動産在庫面積をみると、16年1~3月期にピークを迎えた後、低下が続いている(第2-3-30図)。18年の全人代の政府活動報告では、過去5年間の活動の回顧において、中小都市で分譲住宅の過剰在庫の解消が目に見えて進んだと評価している。

第2-3-30図 不動産在庫面積

二級及び三級都市における在庫解消の進展の背景には、中国政府が進めてきたバラック地区23(「棚戸区」)の再開発政策が影響してきた可能性もある。政府は、再開発によって住宅を取り壊された住民に対して、新住宅の提供または補償金の支払いを行うこととしており、15年以降は補償金の支払いを優先する方針が示されている。また、14年に、人民銀行の長期性の流動性供給の手段として導入された担保付補完貸出(PSL:Pledged Supplementary Lending)制度(政策金融機関に対して、経済・社会政策上重要な分野の整備に必要な資金を貸し出す制度)は、バラック再開発も主要な用途の一つとされている。PSLによる融資残高は、15年末の1.1兆元から18年11月時点で3.3兆元まで増加しており、補償金による住宅購入の増加は不動産在庫の解消にも寄与したとみられる。

他方、中国政府は、18年も不動産価格の上昇を防止する姿勢を強めてきた。18年6月には、不動産事業者に対し、住宅建設部をはじめとする中央政府の7部門が、不動産市場を混乱させる違法行為を取り締まる措置を公表し、違反した企業のリストの公開を行っている。7月の党中央政治局会議においては、改めて、「不動産価格の上昇を断固防止する」とされた。また、10月8日の国務院常務会議では、バラック地区の再開発を引き続き推進する方針が示されたものの、不動産在庫が少なく価格上昇圧力が高い都市においては、補償金の支払い制度を取りやめることを指示したほか、バラック地区の再開発を名目とした地方政府による違法な起債や法律・規定違反行為を厳格に禁じるなど、中国政府はバラック地区の再開発の促進による副作用の抑制にも乗り出している。

以上のとおり、不動産開発投資は、在庫解消の進展等も背景に比較的高い伸びを維持しているものの、政府の不動産市場安定化の取組が継続しており、少なくとも今後大幅に拡大する方向にはないと考えられる。

以上のように、固定資産投資は、中国政府による過剰債務問題への対応により、インフラ関連投資を中心に伸びが低下してきたが、このところの経済運営スタンスの変化を反映して、今後は全体としても緩やかに持ち直していくことが期待される。ただし、米中貿易摩擦の今後の行方によっては、18年に持ち直しがみられた製造業投資を下押しする可能性もあることに留意が必要である。

2.新興国通貨下落の影響(インドネシア・インド経済の動向)

18年のアジア通貨の動向をみると、タイやマレーシアでは年半ばまで増価基調が続き、その後も緩やかな下落傾向にとどまった。一方、インドネシア、インドでは年初から減価傾向が続いた後、8月のトルコ・リラ急落を機に一段と下落し、10月には両国ともに一時過去最安値を記録した。10月末時点で、インドネシアでは年初来11.3%、インドでは同14.3%の減価と大幅な下落となった(第2-3-31図)。ただし、その後、11月以降は増価基調に転じている。

第2-3-31図 アジア通貨の動向

国際収支統計で資金流出入の状況をみると、金融収支(除く外貨準備)は、18年もインドネシア、インド両国とも流入超で推移しているが、インドネシアでは17年に比べ流入が減少傾向で推移し、インドでも、4~6月期に大きく減少した(第2-3-32図)。また、証券投資をみると、インドネシアでは、18年1~3月に流出超に転じ、4~6月期に小幅な流入超となったものの、7~9月期には再び流出超となり、インドでも、18年4~6月期以降、流出超となった。こうした金融収支の動きが、通貨安の背景の一つとなったと考えられる。

第2-3-32図 インドネシア・インドの金融収支

トルコやアルゼンチンでは、金融市場の動揺の背景として、経常収支及び財政収支の赤字など、経済のファンダメンタルズがよくないこともあるとみられる。アジアでも、インドネシア、インドにおいては、経常収支、財政収支ともに比較的赤字幅も大きく、通貨安の一因となったとみられる(第2-3-33表)。他方、外貨準備高をみると、17年にインドネシアで短期対外債務残高の2.6倍、インドで3.8倍となっており、トルコやアルゼンチンと比較して、資金流出が生じた場合の耐性が高いとみられる。1997年のアジア通貨危機時には、インドネシアでも通貨下落に見舞われたが、当時の外貨準備高は、短期対外債務残高を下回る0.5倍となっていたことと比較すると、大きく改善している。なお、トルコやアルゼンチンと比べると通貨の下落が比較的限定的であったこともあり、消費者物価上昇率は、インドネシアでは3%台で安定して推移しており、インドでも、おおむね中期目標(4%±2%)の範囲内で推移している(第2-3-34図)。

第2-3-33表 アジア各国の経済指標の比較(2017年)
第2-3-34図 インドネシア・インドの消費者物価上昇率

ただし、インドネシア、インドともに、このところ、経常収支赤字、財政支出を拡大させる要因がみられることには留意が必要である。まず、経常収支についてみると、景気回復に伴って内需が堅調に推移する中で、17年頃から両国とも輸出の伸びを上回って輸入が大きく拡大し、経常収支赤字も拡大している(第2-3-35図、第2-3-36図)。インドでは、原油を多く輸入しており(輸入金額の約2割が原油)、17年後半からの原油価格の上昇も輸入金額の増加に寄与している。

第2-3-35図 インドネシア・インドの実質経済成長率
第2-3-36図 インドネシア・インドの経常収支(GDP比)

財政支出については、インドネシアでは、18年半ばから実施されている公務員の賞与の増額支給や、燃料価格を据置くための補助金投入24等により、財政支出の拡大が見込まれている。ただし、税収拡大を図るため、税務調査、納税者の情報収集の強化等の取組を実施することとしており、19年度予算案における財政赤字目標を対GDP比1.8%(18年度目標:2.2%)とするなど、財政健全化への姿勢を示している。一方、インドでは、財政赤字(中央政府)を対GDP比3%に縮小することが目標とされているが、18年度予算(18年4月~19年3月)発表時に、目標達成年度が18年度から20年度に先送りされた。また、農業振興等を重視する方針の下、7月に政府が穀物を買い上げる際の最低支持価格25(MSP:Minimum Support Price)の大幅な引上げなど、歳出拡大につながる政策が実施されている。19年2月の19年度暫定予算案26発表時には、18年度の財政赤字の見込みは当初の対GDP比3.3%から3.4%に修正され、さらに、19年度も3.4%と同水準とされた。

冒頭述べたように、アルゼンチンやトルコにおける通貨急落はアメリカの政策金利引上げを背景としたものであった。インドネシアでも、内外金利差による海外への資金流出を懸念し、18年5月以降11月まで6回にわたり、政策金利の引上げが実施された(第2-3-37図)。その一方で、金利の引上げにより生じる国内経済への影響を軽減するため、住宅ローンの負担増を軽減するとともに、融資を拡大させるべく、住宅ローンの借入額上限に関する規制を緩和するなどの対応策も講じられた。また、18年9月から、企業が輸入時に納付する輸入前払い法人税の引上げ(消費財を中心とした製品に対し最高で10%)や、資本財輸入の減少を企図したインフラプロジェクトの見直しといった経常収支赤字の抑制策も実施された。インドにおいても、18年6月及び8月に、原油高などによる投入コストの高まりや景気回復を背景としたコアインフレの高まりなど、主に物価上昇への懸念を背景に、政策金利の引上げが行われた。また、通貨安が進んだ9月以降は、非必需品の輸入を抑制するため、家電等19品目や一部電子・通信機器に対する輸入関税の引上げの措置を行うなど、経常収支赤字の抑制に向けた取組も実施された。

第2-3-37図 インドネシア・インドの政策金利

以上のように、インドネシア及びインドでは、アメリカでの政策金利引上げを背景とした18年8月以降の新興国通貨への下押し圧力に対し、政策金利の引上げや経常収支赤字の抑制策を実施し、自国通貨を安定させてきた。こうした中、インド準備銀行は、消費者物価上昇率が18年半ば以降低下してきたことから、19年2月に政策金利の引下げを行った。この背景には、19年1月にアメリカのFRBが更なる利上げに慎重な姿勢を見せたことがあるとみられる(第2章第2節2.財政・金融政策の動向 を参照)。今後、他の新興国においても、インドネシアやインドと同様の政策変更に向けた動きがみられる可能性がある。

コラム2-2:アルゼンチン及びトルコの通貨下落

18年のアルゼンチン及びトルコは、アメリカでの政策金利引上げを背景に、大幅な通貨下落を経験した。特に8月に生じたトルコ・リラの下落は、トルコの政情やアメリカの外交政策動向との関係もあり、急激なものであったことから、通貨危機の世界的な伝染(コンテイジョン)も懸念された。実際、トルコ・リラの急落はアルゼンチン・ペソの急落を招いたばかりでなく、インドネシアやインド等アジアの新興国通貨の下落にもつながった。10月以降、アルゼンチン及びトルコ通貨の下落は収まり、その後は比較的安定して推移しているが、両国経済のファンダメンタルズは必ずしも強いものではないため、動向には引き続き注視が必要である。

(1)アルゼンチン

(18年4~6月の通貨下落)

アメリカでは、15年12月に利上げを再開して以降利上げ局面が続いており、17年以降はおおむね3か月に1回のペースで利上げが進められた。18年4月末、アメリカの長期金利が約4年ぶりに投資家の心理的な節目である3%を上回ると、新興国通貨からより安全な資産であるドルへと資金が還流し、アルゼンチン・ペソはドルに対して顕著に下落し始めた(図1)。アルゼンチン中央銀行は通貨防衛策として、既に27.5%となっていた政策金利について、4月27日から5月4日までの約1週間で3回の利上げを行い、40%まで引き上げた(図2)。また政府は、財政健全化に前向きな姿勢を内外に示すべく、18年のプライマリーバランスの赤字(対GDP比)の目標を-3.2%から-2.7%に厳格化した。しかしながら、ペソの下落は止まらず、中央銀行は通貨下支えの目的でドル売り・ペソ買いの介入を繰り返し行ったが、これが外貨準備高の大幅な減少につながったため(図3)、政府は並行してIMFに支援を要請する事態となった。6月7日には、プライマリーバランスの赤字及び消費者物価上昇率に関する新たな目標設定(注1)を条件に、IMFは500億ドルの緊急融資枠を承認(スタンドバイ取極(SBA)(注2))し、ペソは一時的に下げ止まった。

(18年8~10月の通貨下落)

8月上旬にトルコ・リラが急落すると(後述)、通貨の下落はアルゼンチンにも波及し、ペソは一時1ドル=30ペソと再び最安値を更新した。また、消費者物価の上昇が4月より加速し、6月には消費者物価上昇率は前年比+30%近くに達した(図4)(注3)。これを受け、中央銀行は8月13日に政策金利を40%から45%に引き上げたが、その後もペソは連日のように対ドルで過去最安値を更新したため、29日には政府はIMFに追加支援を要請するとともに、翌30日には中央銀行は政策金利を60%まで引き上げた。また、9月3日には政府は緊急対応として、輸出税の増税や省庁再編を柱とする財政再建策を発表した。

図1 アルゼンチン・ペソ対ドルレート
図2 アルゼンチン政策金利
図3 アルゼンチン外貨準備高
図4 アルゼンチン消費者物価上昇率

9月26日、IMFはアルゼンチン政府の要請に応じ、同国向け融資枠拡大(71億ドルの追加)及び18~19年の融資枠拡大(約190億ドル相当の前倒し)を承認するとともに、その条件として、物価や為替変動を抑える政策をアルゼンチン政府・中央銀行に求めた(注4)。これを受けて10月1日以降、政府・中央銀行は新たな経済政策の実施に乗り出した。まず、ペソの大幅な減価により、物価が大幅に上昇していたことから、金融政策の枠組みが変更された。具体的には、インフレ・ターゲットを廃止し、マネタリーベースの伸び率を19年6月までゼロに抑えることとした。また、それまで明確なルールを設けず行われていた為替介入について、不介入レンジ(注5)が設定された(当初は34~44ペソ/ドル)(注6)。IMFの支援やこうした政策変更もあり、消費者物価上昇率は依然として高水準にあるものの、ペソ相場は比較的安定を取り戻しつつある。

(2)トルコ

(18年5~6月の通貨下落)

トルコ・リラは、18年3月のアメリカの利上げを機に下落基調が始まった(図5)。また5月以降、先にみたアルゼンチンの大幅な通貨下落に連られる形で更なる下落となった。リラ安が進んだ背景としては、トルコ経済のぜい弱性に加え、エルドアン大統領が、高い金利が高いインフレ率を招いているとの持論を展開して、トルコ中央銀行による利上げのけん制や金融政策への介入を示唆する発言(注7)を行っていたことも、トルコの経済政策運営に対する信認の低下として影響したと考えられる。

こうした中、トルコ中央銀行は、5月23日に臨時の金融政策委員会を開き、後期流動性窓口貸出金利(Late Liquidity Window Interest Rate)を3.0%ポイント引き上げ、16.5%とした(注8)。また、5月28日には、それまで事実上4種類存在していた政策金利(注9)について、1週間物レポ金利が(唯一の)政策金利であることを明確化するとともに、6月1日に政策金利を8%から16.5%に引き上げることを発表した(図6)。政策金利はさらに6月7日にも1.25%ポイント引き上げられ、17.75%とされた。こうしたトルコ中央銀行の対応を受け、市場は一旦落ち着きを見せた。

その後、6月24日には、トルコ大統領選挙でエルドアン大統領が再選した。エルドアン大統領が大統領選の後に金融政策に介入する趣旨の発言をしていたことから、新政権発足後初めての7月24日の金融政策委員会の動向が市場で注目されていたが、利上げは実施されなかった。6月並の大幅な利上げを予想していた金融市場は大きく失望し、リラは一時一層下値をうかがう展開となった。

(18年8~10月の通貨下落)

7月25日、16年7月にトルコ国内で発生したクーデター事件を支援したとの容疑でトルコ当局に拘束されていたアメリカ人牧師をめぐり、リラ相場は8月に大幅に急落した。アメリカのトランプ政権は、アメリカ人牧師の即時釈放を求めていたが、トルコ当局がこれを拒否したため、経済制裁の実施を発表した(注10)。国際金融市場では、両国関係の悪化がトルコ経済や金融市場などに悪影響を与えるとの懸念が深まり、リラは大きく下落した(図5)。特に、アメリカがトルコに対する経済制裁として、鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税を発表した8月10日には前日比で13.6%下落、13日には1ドル=6.88リラと最安値を記録し、年初来の騰落率は、-44.9%となった。

このようなリラ急落に対し、トルコ政府・中央銀行は様々な措置を行った。トルコ中央銀行は、8月13日に金融システムに流動性を供給する目的で、リラ建ての預金準備率及び外貨建て預金の準備率を引き下げる(注11)とともに、実質的な利上げを実施した(注12)。さらにトルコのアルバイラク財務相は8月14日に投資家やエコノミスト向け電話会議を開催し、資本規制を導入する計画がないことを説明し、市場関係者の懸念払拭に努めた(注13)。この一連の動きにより、一旦リラは下げ止まった。

リラの急落により、消費者物価上昇率も高水準となり、9月3日に発表された8月の消費者物価上昇率は、前年比+17.9%と7月の+15.9%から大幅に上昇した(図7)。このためトルコ中央銀行は、消費者物価上昇率の発表後に、次回(9月13日)の金融政策委員会では物価の安定のため金融政策スタンスを調整する旨を表明した。実際に、9月13日の金融政策委員会では、政策金利である1週間物レポ金利を17.75%から6.25%ポイント引き上げ24.0%とする大幅な利上げを決定した。さらに、声明文では「物価上昇率の見通しに顕著な改善がみられるまで、金融政策による引締めは、断固として維持される」として、追加利上げの可能性も示唆した(注14)。エルドアン大統領が中央銀行の独立性を脅かしかねないような発言を繰り返す中での利上げの実施は、中央銀行の独立性を示すものと市場で好感され、リラは上昇した。

さらに、10月12日には、トルコの地方裁判所がアメリカ人牧師を釈放する決定を下し、トルコとアメリカ両国の関係改善の糸口となった。トルコ中央銀行の大幅な利上げと、アメリカ人牧師の釈放により、リラ相場は落ち着きを取り戻した。

図5 トルコ・リラ対ドルレート
図6 トルコ政策金利
図7 トルコ消費者物価上昇率
(トルコ・リラ急落の欧州への影響)

8月のリラ急落は世界的な株安につながったが、特に欧州株価が大きく影響を受けた(図8)。その要因として、トルコの海外資金調達元の多くを欧州の金融機関が占めていたことが挙げられる。国外銀行(BIS報告銀行)からのトルコ向け与信金額は1,751億4,000万ドルとなっているが、スペイン、フランス、イタリア、英国を合わせるとトルコ向け国際与信の約7割に上る(図9)。このトルコ向け国際与信のデフォルトリスクが意識されたため、欧州を中心として先進国の株式市場もリラ急落により動揺した。ただし、欧州各国の銀行において、トルコ向け国際与信の国際与信全体に占める割合は高くはなく、リラ相場が落ち着くとともに、トルコ・リラの急落を契機とする株価の下落は落ち着きを取り戻した(図10)。

図8 欧州各国株価
図9 トルコ向け国際与信(2018年9月末)
図10 各国の国際与信残高全体に占めるトルコ向けの割合(2018年9月末)

(3)アルゼンチンとトルコで特に通貨が大幅下落した要因

アメリカの利上げは、新興国にとって、対ドル自国通貨下落の共通要因として働く。一方で、18年のアルゼンチンとトルコでの通貨下落は、アジア新興国(注15)と比較して大幅であった。これは、新興国の通貨下落局面では、経済のファンダメンタルズがぜい弱な国で特に通貨が売り込まれる傾向があるためと考えられる。過去の新興国の通貨下落局面を確認すると、13年5月のバーナンキショックの時に特に大きく下落した国(インドネシア、南アフリカ、トルコ、ブラジル、インド)は、経常収支赤字や財政赤字、物価上昇率といった経済のファンダメンタルズがぜい弱であるという共通点がみられた(注16)。18年に通貨が大幅に下落したアルゼンチンやトルコの経常赤字と財政赤字をみると、共に大きくマイナスとなっており、いわゆる「双子の赤字」の状態であることが確認できる(図11)。また、一般に外貨準備高は、最低でも短期対外債務残高と同等の額が安定的な資金流入の上で必要とされるが、17年末時点でアルゼンチンとトルコは共にこの水準を下回っており(前掲第2-3-33表)、経済のファンダメンタルズの改善は引き続き課題となっている。

図11 経常収支、財政収支

(注1)プライマリーバランスの赤字について、対GDP比で18年は-2.7%、19年は-1.3%、20年には±0.0%(均衡)を目指すこととされた。物価上昇率についても、19年、20年、21年でそれぞれ+17%、+13%、+9%に抑える(18年については目標設定をしない)という目標が掲げられた。

(注2)短期的な国際収支上の問題に対処するよう考案されたプログラム。SBAの適用期間は通常12~24か月で、返済期間は支払いより3.25~5年となっている。融資は対象国が適切な期間内に、問題解決に向けた政策目標を達成することを条件に行われる。

(注3)アルゼンチンの物価上昇率はその後も上昇を続け、19年1月には49.3%となった。

(注4)この後10月26日にIMF理事会が開催され、9月の事務レベルでの合意時より少ない563億ドルの融資枠確保が正式に承認された。

(注5)19年初にペソが上昇し、不介入レンジを頻繁に下回るようになったことを受け、2月には新たに為替介入に関するガイドラインが発表された。これにより、為替の変動が激しい場合に、中央銀行によるマネタリーベースの調節が可能となる。

(注6)アルゼンチンは通貨暴落以降、為替介入を繰り返してペソを下支えしていたが、IMFはこうした場当たり的な対応を批判し、財政再建により市場の信頼を取り戻すよう要求したため、緊急時を除き為替介入を行わないこととなった。

(注7)18年5月14日のアメリカブルームバーグとのインタビューでの発言。「金利を下げれば、インフレも低下する」とし、「中央銀行はもちろん独立しているが、独立性を有しながら、行政権の長である大統領のシグナルを無視することはできない」と発言した。

(注8)支払システムの不測の事態を回避することを目的として、市中銀行が一日の終わりに必要とする流動性を満たすため、トルコ中央銀行が最後の貸し手として提供する借入枠。市場金利の上限となるため、17年以降、事実上の政策金利として金融引締めに活用されていた。

(注9)1週間物レポ金利、そのコリドー上下限をなす翌日物貸出金利及び翌日物借入金利、後期流動性窓口貸出金利。

(注10)7月26日、アメリカのトランプ大統領が、アメリカ人牧師が即時解放されない場合、トルコに対し大規模な制裁を発動する可能性を表明。7月29日にエルドアン大統領がアメリカ人牧師の即時解放を否定すると、8月1日にアメリカ政府がトルコのギュル司法大臣とソイル内務大臣に対し、アメリカ国内の個人資産を凍結し、アメリカ国民との取引を禁止する制裁を発表した。それに対し、8月4日にエルドアン大統領が、アメリカのセッションズ司法長官とジンキ内務長官がトルコ国内に保有する個人資産を凍結する制裁を発動することを表明した。8月10日、トランプ大統領が鉄鋼輸入関税を50%、アルミニウム輸入関税を20%に引き上げると表明。それに対し、8月15日、トルコ政府がアメリカからの乗用車やアルコール飲料等の輸入品に対し、関税を引き上げると表明した。

(注11)トルコ中央銀行は、金融システムに流動性を供給する目的で、リラ建ての預金準備率を2.5%、外貨建て預金の準備率を期間3年までを対象に4.0%に引き下げる決定をした。

(注12)トルコ中央銀行は、1週間物レポ金利(17.75%)の入札を中止し、翌日物貸出金利(19.25%)に切り替えることで、実質的な利上げを実施した。

(注13)同電話会議でアルバイラク財務相は、IMFへの支援要請を計画していない旨も説明した。

(注14)その他、資金供給手段を翌日物貸出金利から、1週間物レポ金利に復帰することを表明した。

(注15)アジア新興国の為替動向については、第2章第3節2.を参照。

(注16)内閣府(2015)を参照。

3.アジア経済の見通しと主なリスク要因

(1)中国経済の見通し

中国経済は、景気は緩やかに減速しており、先行きについても、当面は緩やかな減速が続くことが見込まれる。ただし、中国政府は、景気の安定をより重視するスタンスの下で各種政策を引き続き実施していくものとみられ、そうした政策の効果が次第に発現していくことが期待される。国際機関の見通しをみると、実質経済成長率は、18年の6.6%から、19年は鈍化すると見込まれている(第2-3-38表)。

第2-3-38表 国際機関の見通し

(2)中国経済の主なリスク要因

(米中貿易摩擦の動向及び影響)

中国経済の主なリスク要因としては、まず米中間の貿易摩擦が挙げられる。18年7月以降、アメリカによる追加関税措置が実施される中も輸出は堅調に推移していたが、18年半ばから新規輸出受注に係る製造業の景況感は大きく低下し、さらに、18年末から輸出の伸びにも低下がみられる。18年12月の米中首脳会談において、アメリカによる2,000億ドル相当の追加関税の税率引上げは90日間留保されることとなったものの、米中貿易協議においては知的財産権保護や技術移転等を含む広範な議題が含まれており、先行きについては依然不透明となっている。中国の最大の輸出先はアメリカであり、追加関税の税率引上げなど、貿易制限措置が更に講ぜられた場合には、景気が相当程度下押しされるものと見込まれる。

(中国政府による過剰債務問題への対応)

中国政府による過剰債務問題への対応も、リスクとして挙げられる。中国政府は、債務削減の取組を進めているが、18年には、シャドーバンキングの急速な縮小による資金調達環境の引締まりなどにより、当初想定されていた以上に景気に下押し圧力を与えたとみられる。今後も、景気の安定とのバランスをとりつつも、債務削減の取組が進められていくものとみられるが、引き続き実施のペースやタイミングなど難しい舵取りが求められる。

(金融資本市場の変動の影響)

米中貿易摩擦が高まる中、18年は株価や為替に大幅な変動がみられ、企業や個人のマインドへの影響などを通じ、実体経済にも下押し圧力を与えたとみられる。今後についても、米中貿易摩擦の先行きは依然不透明であり、景気下押し要因となるリスクがある。

(3)その他アジア経済の見通しと主なリスク要因

その他のアジア経済についてみると、18年はおおむね堅調に推移し、国際機関の見通しでは、19年についても、国により差はあるものの、総じて18年と同程度の成長が見込まれている(前掲第2-3-38表)。

ただし、韓国、台湾、タイについては、輸出依存度が比較的高く(名目GDPに対する輸出(通関ベース)の割合(17年)は、韓国37.5%、台湾55.2%、タイ52.2%)27、世界経済の動向に影響を受けることに留意が必要である。これらの国の輸出は、世界経済の回復に伴い、17年に大きく増加したが、18年はその反動もあって伸びが鈍化傾向にある(第2-3-39図)。また、製造業の景況感をみると、18年秋頃から悪化がみられる(第2-3-40図)。今後、米中貿易摩擦が更に高まった場合には、GVCを通じた影響や、またこれらの国では中国向け輸出のシェアが高いことから(輸出に占める中国(香港含む)向けのシェア(17年)は、韓国31.6%、台湾41%、タイ17.7%)、中国の景気減速による影響を受け、景気が下押しされる可能性がある。

また、タイ、インドネシア、インドでは、19年に総選挙が予定されており、その動向が経済政策に与える影響についても注視する必要がある。

第2-3-39図 韓国・台湾・タイの輸出(前年比)
第2-3-40図 韓国・台湾・タイの製造業PMI

1 税外の費用負担とは、各種行政手数料や社会保険料等。
2 増値税とは、物品の販売、加工・修理などの役務の提供、貨物の輸入の際に発生する付加価値税。
3 19年1月15日国務院報道弁公室主催記者会見。
4 18年11月9日の銀行保険監督管理委員会公表資料(民間企業への金融支援に関する郭主席インタビュー)において、民営経済は国民経済の60%以上のシェアを占める一方、統計が不完全ではあるが、現在銀行の貸出残高のうち、民営企業が占める割合は25%となっており、不均衡となっていると述べている。
5 15年12月の中央経済工作会議では、デレバレッジが16年の経済政策の重要課題の一つに位置づけられた。これを受けて16年10月に企業部門の債務削減に向けた具体的方針(国務院「企業のレバレッジ比率の積極的かつ安定的な引下げに関する意見」)が示され、17年にシャドーバンキングに対する規制・監督強化が進められるなどの取組が行われた。
6 19年1月29日中国国家発展改革委員会記者会見。なお、小売総額に占める自動車のシェアは約13%とされる(18年7月16日中国国家統計局記者会見)。
7 一定規模以上の企業とは、主な営業収入2,000万元以上の卸売業、500万元以上の小売業、200万元以上の宿泊及び飲食業を指す。
8 18年の自動車販売台数は2,808万台。乗用車と商用車の比率は、それぞれ84.4%と15.6%。
9 データが確認できる1998年以降では、初めて前年比マイナスとなった。
10 本来10%である税率が、16年末までは5%、17年末までは7.5%に引き下げられた。なお、18年の乗用車販売台数に占める小型乗用車シェアは66.8%。
11 中国汽車工業協会が公表している乗用車販売台数は国内生産及び現地組立車を含む。なお、中国汽車工業協会によれば、完成輸入車の販売台数(17年)は122万台。
12 中国では、外資企業が現地生産を行う際、中国企業と合弁会社を設立することとされている。ブランド国別は、当該外資企業のブランドによる区分。
13 都市部調査失業率は、ILO基準に沿って調査され、都市戸籍を持たない農民工も含む都市部常住人口を対象としている。18年3月の全人代で初めて目標に取り入れられ、18年4月から定期公表が開始された。
14 消費者信頼感指数は、期待指数と満足度指数から構成される総合指数。期待指数は、今後6か月間の雇用情勢、世帯収入の状況に対する消費者の予測を総合した指数。満足度指数は、当面の雇用情勢、世帯収入の状況、購入時期に対する消費者の判断を総合した指数。
15 中国人民銀行(2018)を参照。
16 この他、利回りの高い消費ローン貸出への銀行のインセンティブが強いこと、P2P(Peer to Peer)金融(インターネットを通じて個人間の資金を融通するソーシャルレンディング)に対する監督強化によりこうした資金需要が銀行の消費ローンに回帰していることも挙げている。
17 「供給を一段と最適化して消費の安定成長を推進し、強大な国内市場の形成を促進する実施方案(2019年)」
18 鉄鋼については、第13次5か年計画期間中(16~20年)に、1~1.5億トンの生産能力を削減することとされているが、18年に目標の上限を達成した。
19 中国国家統計局による18年7月の国民経済運行状況についての記者会見(18年8月14日)。
20 収益性のある公益事業向けの資金調達の目的で、地方政府が発行する債券。財政収入ではなく、投資事業の収益から返済される。18年の発行枠は1.35兆元(17年は8,000億元)。
21 新築住宅販売価格統計で調査対象とされている70都市のうち経済力、不動産取引量、都市規模などにより、北京市、上海市、深セン市、広州市の4都市が一級都市と位置づけられている。なお、二級都市には天津市、重慶市、成都市、南京市など、一級都市以外の省都・直轄市など31都市が含まれ、それ以外の35都市が三級都市に含まれる。
22 中国の地域別分類では、東部、中部、西部の3つ(統計によってはこれに東北部が加わり4つ)に分かれており、東部地区については、北京市、上海市、広東省(広州市と深セン市が属する)等10の省(市)が含まれる。
23 バラック地区とは、老朽化により安全面にリスクがあるほか、トイレなどの基礎的な設備が不足する、単純な構造の家屋が密集する地区。
24 ジョコ・ウィドド大統領の下、15年1月から燃料補助金制度(燃料の小売価格の上昇を抑制するための補助金制度)を見直し、補助金の一部削減を実施していたが、18年に入り同制度を再び導入することとした。原油価格が上昇した場合は、燃料小売価格との差額分の補助金を投入し、19年まで補助金対象の燃料小売価格を据え置くこととした。
25 政府が、低所得者向けに市場価格よりも低価格で穀物を提供する制度が実施されており、その際の政府による買上げ価格。
26 19年は総選挙が予定されており、総選挙前の予算案は暫定予算案の位置付けとなる。
27 なお、インドネシアは16.6%、インド12.0%(インドは17年度)。

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