第3節 期待が寄せられるも自由度の少ない金融政策
2008年9月の世界金融危機発生後、欧米では経済成長のペースが鈍いことから、金融政策は緩和的なスタンスが採られ続けられてきた。他方、新興国では景気過熱への対応から10年前半より利上げや預金準備率引上げが行われてきた。
こうした中で、10年後半頃より物価が世界的に上昇傾向にあり、特に新興国では物価上昇率の高い伸びが続いている。
しかし、前述のとおり、11年半ばより欧米を中心に回復が全体として弱まってきており、欧米では、物価が上昇しているものの緩和的な金融政策を続けざるを得ない状況に置かれている。片や中国やインドでは、物価上昇に歯止めがかからず引締めスタンスを緩めることができない状況にある。
本節では、物価と金融政策の動向を横断的に概観し、世界的な物価上昇と欧米を中心とする世界経済の減速の中で、先進国・新興国ともに政策運営が難しい現状を浮き彫りにする1。
1 各国の個別の金融政策については、第2章各節を参照。