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1.金融危機対応で拡大した財政赤字・債務残高

 主要先進国における財政収支は、2005年~06年の世界的な景気回復により、おおむね改善傾向をみせていた。しかし、07年の米国のサブプライム住宅ローン問題を契機とする景気後退や、翌08年の世界金融危機の発生により、いずれの国においても税収が落ち込んだ。さらに、金融危機対応策や大規模な景気刺激策が実施された結果、構造的財政赤字1が急拡大し、結果として財政収支全体も09年にかけて大幅に悪化した(第1-2-1図)。

第1-2-1図 主要先進国の一般政府財政収支(GDP比)
第1-2-1図 主要先進国の一般政府財政収支(GDP比)

 その後、景気刺激策の規模縮小を背景に構造的財政赤字は縮小傾向にあるが、景気回復力の弱さを背景として税収が伸びず、財政赤字額全体が構造的赤字額を上回る状況が続く見通しとなっている。また、実額(ドルベース)でみるとアメリカの財政赤字額が他の主要国の赤字額の2倍近くに達しており、主要国全体の財政不均衡拡大の太宗を占めていることがわかる(第1-2-2図)。

第1-2-2図 主要先進国の一般政府財政赤字額(フロー、ドルベース)
第1-2-2図 主要先進国の一般政府財政赤字額(フロー、ドルベース)

 こうした財政赤字状況を反映して、政府の債務残高も08年以降、いずれの国でも急速に増加している。主要先進国全体の一般政府の債務残高(グロスベース)でみると、2000年水準の14.6兆ドルから、08年には25.5兆ドル、10年には32.3兆ドルへと年々拡大しており、なかでも悪化の状況はアメリカ、日本で際立っていることが分かる(第1-2-3図)。債務残高のGDP比でみても、ドイツは頭打ちから低下の兆しがみられるのに対し、他の主要国では12年の時点でも上昇傾向に歯止めがかからない見通しとなっている2

第1-2-3図 主要先進国の一般政府債務残高(グロスベース)(ストック)
第1-2-3図 主要先進国の一般政府債務残高(グロスベース)(ストック)

 このように、主要先進国の財政状況は金融危機後、急速に悪化しており、財政再建に向けた取り組みが急務となっている。


1 構造的収支は財政収支から循環的収支を引いたもの。構造的収支は財政政策の裁量的な変化を反映する一方、循環的収支は景気循環に伴う税収の動き等を反映するとされる。詳細は、内閣府(2006)参照。
2 ただし、当該見通しは11年4月以前のデータに基づいて作成されたものであり、11年夏以降の欧米の財政不安の状況を反映したものではないことに留意する必要がある。
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