17 英国 United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland |
<2008年の経済>
2008年の経済成長率は、景気が後退する中、0.8%程度となる見込みである(政府見通し0.75%、民間機関24社の平均0.8%(08年12月時点))。各見通しは半年前に比べて大きく下方修正されている。
英国では金融・ビジネスサービス業が全産業の3割を占めることから、信用収縮及び金融危機の影響が経済にも大きな影響を与えている。信用収縮に伴い銀行の貸出態度が厳格化し、企業・家計に対する貸し渋りが、設備投資や住宅投資、消費の減速につながっている。また、企業部門の悪化を背景に、失業率は10月に6.0%に上昇するなど、実体経済は顕著に悪化している。消費者物価上昇率は、原油・商品価格の高騰により、08年初から上昇し始め、9月には電気・ガス料金引上げの影響から、前年同月比5.2%となった。その後、10月以降は低下傾向にあるが、依然としてインフレ目標の2%を上回る水準にある。
こうした経済の悪化に対して、政府は11月に2009年度予算に向けたプレ・バジェット・レポートにおいて、付加価値税減税、公共設備投資の前倒し、中小企業の貸出支援等を含む、総額200億ポンド規模の財政刺激策を発表した。
<2009年の経済見通し>
2009年の経済成長率は▲1%前後と、マイナス成長となる見込みである(政府見通し▲1.25〜▲0.75%(08年11月時点)、欧州委員会▲1.0%(08年11月時点)、民間機関24社の平均▲1.2%(08年12月時点))。
これまでの景気拡大を支えてきた個人消費は、09年にマイナスになると見込まれる。消費の減速により内需が弱まる一方、ポンド安にもかかわらず、輸出は世界景気の減速により伸び悩むと見込まれる。ただし、輸入の減少により、外需の寄与はプラスを保つと予測される。また、金融危機の影響と住宅市場の一層の調整が、英国経済を更に減速させるおそれがある。住宅価格は08年初来、11月までに10〜20%下落しているが、09年にかけて更なる下落が見込まれる。
さらに、景気の下振れリスクとしては、金融危機の長期化・深刻化、住宅価格の更なる下落、そしてデフレ・リスクが挙げられる。こうしたリスクが顕在化すれば、英国経済の景気後退を長引かせる可能性がある。
<財政金融政策の動向>
2008年度の財政赤字は政府見通し(08年11月)では、GDP比▲5.4%となる見込みである。英国の財政赤字は近年改善をみせていたが、08年2月と9月に合わせて2銀行が一時国有化され、10月には大手銀行3行に対して合計370億ポンドの資本注入が行われるなど、金融危機対策の支出がかさんでいる。また、歳入面に関しては、5月からの所得税の課税最低限度額引上げ及び12月からの付加価値税引下げに伴う税収減、北海油田関連の税収減等により減少が見込まれる。結果として財政赤字は安定成長協定に定められた基準の3%を大きく超過すると見込まれる。
金融政策については、イングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(MPC)は、08年10月から利下げに転換した。10月の緊急協調利下げ(下げ幅0.50%)に続き、11月同1.50%、12月同1.00%の利下げを行い、12月現在で政策金利は2.00%となった。MPCは、08年9月をピークに物価上昇圧力が低下していくとの見通しの下、景気後退への対策として利下げに転じた。