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18 ロシア              Russian Federation

ロシア経済のこれまで

<2008年の経済>
  2008年の経済成長率は、6%程度となる見込みである。08年の前半は、交易条件の改善に支えられて年率8%程度と堅調に推移した。個人消費は、減速傾向ではあるが、実質賃金と消費者金融の高い伸びにより、二桁の拡大を示し、小売売上高も堅調に推移した。設備投資の伸びは鈍化の兆しはあるものの、高い水準を維持した。しかし08年後半には、8月のグルジア紛争を契機とした外国資本の流出や、世界的な金融危機と先進国の同時景気後退等から、ロシア経済も大きく減速し、7〜9月期の経済成長率は前年同期比で6.2%へと減速した。建設投資は伸びが大きく低下し、資金調達難から多くのプロジェクトが中断した。資源の国際価格の下落により原油、天然ガス等の鉱業部門が停滞し、製造業は全体的に減速傾向を示し、11月の鉱工業生産は前年同月比で▲7.8%と大幅な減少となった。ロシアの株価指数は5月のピークから10月下旬までで75%以上下落し、株式市場の閉鎖も数回にわたった。消費者物価上昇率(前年同月比)は、08年後半には15%程度へと上昇し、政府の修正後の08年の目標値11.8%を更に大きく上回る水準となった。食糧価格とエネルギー価格の上昇率を超える物価高騰の要因は、強い内需と、資源輸出に伴う決済代金の流入増、中央銀行のルーブル安誘導等によるものであったが、国際資源価格の下落と資本の国外流出により物価上昇圧力は弱まっている。

ロシアの主要経済指標

<2009年の経済見通し>
  世界的な金融危機と先進国の同時景気後退を受けた景気の落込みにより、2009年のロシアの経済成長率は2〜3%程度へ鈍化するとみられる。08年半ばまでの原油価格上昇による交易条件の改善がロシアの内需の伸びを支えてきたが、その後の原油価格低下の影響から、09年には交易条件が悪化するとみられており、経常収支の黒字幅が大幅に縮小すると見込まれる。また、設備投資は銀行貸出態度の厳格化による資金調達難と需要の低迷を受けて、弱い動きになるとみられる。生産の伸びも鈍化するとみられ、特に中小企業の生産が大きく落ち込むことが懸念されている。

<財政金融政策の動向>
  原油価格高騰による財政収入増加を受けて、中央(連邦)政府の財政黒字は08年1〜8月に同期間のGDP比8.8%となり、08年全体の目標(同4.6%)を大幅に上回った。ただし、08年後半以降、景気回復策に対する歳出増圧力が高まっていることに加え、国際的な資源価格の下落により石油及び天然ガス収入が減少する結果、09年には中央政府の財政は赤字に転じる可能性がある。さらに、ロシア国内の金融不安に対して政府が銀行への資本注入等の金融支援策を発表しており、このことも財政悪化の要因となり得る。政府は旧安定化基金が08年2月に改編されて設立された「準備基金」と「国民福祉基金」の資産(合わせて約2,000億ドル規模)のうち、国民福祉基金の資産の一部を景気対策として活用することとした。為替政策においては、外国資本の流出によるルーブル下落に対し、ロシア中央銀行がルーブルの買支えを継続的に行っている。金融政策では、高止まりするインフレへの対策と足元の信用収縮への対応の間で、中央銀行の金融政策は難しいかじ取りを迫られている(政策金利は08年12月1日に1.00%引き上げられて13.00%となった)。


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