3 中 国 People's Republic of China |
<2008年の経済>
2008年1〜9月期の経済成長率は前年同期比9.9%と一けた台の伸びとなり、景気は減速している。四半期別にみると、経済成長率は7〜9月期に前年同期比9.0%となっており、08年通年でも9%台となることが見込まれる(民間機関25社の平均9.5%(08年12月時点))。成長率鈍化の要因としては、世界経済の減速や08年前半までの輸出抑制策の影響による輸出の減速に加え、一時的要因として、5月に発生した四川大地震等の大きな災害や、8月のオリンピック開催に伴う大気汚染浄化のための工場の操業制限による生産の鈍化などの影響があったと考えられる。その後も更に景気の減速が鮮明になってきており、輸出は、1〜11月期に前年同期比19.3%増と07年から伸びが鈍化、11月単月では減少に転じ、鉱工業生産も、二けた台の伸びから10月に前年同月比8.2%、11月同5.4%と急速に減速している。一方、内需は比較的堅調に推移しており、固定資産投資(政府部門を含む)は、1〜11月期(名目)で前年同期比26.8%増となった。消費者物価上昇率は、食品価格等の上昇により07年後半から上昇を続けていたが、08年4月以降は低下に転じ、11月には前年同月比2.4%まで低下している。こうした中、政府は、経済運営の方針を、経済の過熱防止から経済の穏やかで比較的速い成長の維持へと転換し、11月9日には、内需拡大のための10項目の措置を発表した。
<2009年の経済見通し>
2009年の経済成長率は、世界経済の減速に伴う外需の鈍化により、減速が見込まれるものの、堅調な個人消費と内需拡大策の効果により、8%程度になると見込まれる(民間機関25社の平均7.8%(08年12月時点))。内需拡大策が高い波及効果をもたらす、あるいは更に追加的な財政支出等の措置が採られれば、上振れの可能性もあると考えられる。他方、下振れリスクとして、輸出が予想以上に大きく減速した場合に、過剰設備の問題や雇用問題が顕在化し、中国経済をけん引してきた固定資産投資の伸びが大きく鈍化し、同時に家計消費も鈍化するリスクが考えられる。なお、上記のうち、より可能性が高いのは下振れリスクと考えられる。
<財政金融政策の動向>
財政政策をみると、2007年度の財政収支は1540億元(GDP比0.6%)と若干の黒字となった。08年度の財政政策については、全国人民代表会議(08年3月)においては、「穏健な財政政策」を維持するとしており、歳出については、三農問題の解決のほか、社会保障・教育・医療衛生等の民生問題等に重点を置くとされたが、景気の状況にかんがみ、11月に行われた国務院常務会議では、「積極的な財政政策」に転換する方針が打ち出され、同時に内需拡大のための10項目の措置(10年末までに概算で4兆元(GDP比約16%)の投資規模)が発表された。同措置の一環として、08年10〜12月期中に、まず総額4,000億元の投資が行われることとされている。
金融政策についても、経済の過熱防止とインフレ抑制を方針として、08年前半までは引締めスタンスが採られてきたが、11月に「適度に緩和した金融政策」に転換する方針が打ち出された。貸出基準金利は、9月15日の6年7か月ぶりの引下げを始めとした合計4回の引下げにより、7.47%から5.58%となっている。その他、預金基準金利は3回、預金準備率は3回引き下げられている。人民元の対ドルレートは、05年7月の約2%の切上げ以降、増価基調で推移してきたが、08年7月半ば以降はほぼ横ばいの動きとなった後、12月初にはやや減価し、08年12月10日時点では6.8633元/ドル(08年年初比5.9%の増価)となっている。なお、08年12月に行われた中央経済工作会議では、来年度の経済運営の方針として、人民元為替レートの合理的でバランスがとれた水準における基本的な安定を維持するとの言及がなされている。