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第1章のポイント

1.世界金融危機の発生と政策対応

  • 2008年9月15日の米大手投資銀行の破綻を契機として、「世界金融危機」が発生。欧米では、金融機関の経営不安が続くとともに、市場が機能不全に。
  • ヨーロッパの危機は、アメリカ発の影響もあるが、アメリカ以上に高い金融機関のレバレッジ比率や住宅バブルの崩壊等、ヨーロッパ自身の問題によるところが大きい。
  • 新興国では、アメリカ発の直接の影響は小さかったものの、「質への逃避」や欧米金融機関による「高レバレッジ解消」の影響を受けて、株価及び通貨が下落。
  • 世界大恐慌と比較すると、今回の危機の規模は、実物面及び金融面とも今のところ小さいが、(i)グローバルな危機、(ii)危機の波及が速い、(iii)証券化により複雑化という点が特徴。
  • 金融危機の発生に対し、各国は迅速に危機対応策を実施。金融機関への資本注入とともに、不良債権の買取り等により金融機関のバランスシートから不良債権を切り離すことが重要だが、今のところ資本注入が先行。
  • 危機対応策により、中央銀行のバランスシートが急拡大しており、財政赤字の急激な拡大懸念とあいまって、「通貨の信認」の問題が発生する可能性。将来の「出口戦略」として、財政健全化に向けた道筋も示す必要。

2.世界金融危機発生の背景

(1) マクロ経済的な背景

  • マクロ経済的には、グローバル・インバランスの拡大に伴い欧米の金融市場への資金流入が拡大し、世界的な低金利とあいまって、金融機関の過剰なリスク・テイクを助長。また、新興国等からの資金フローがアメリカの債券投資に向かったため、金融政策を引き締めても長期金利が上昇しない状況になり、ますます過剰なリスク・テイクに傾斜。

(2) 金融機関に起因する問題

  • 危機発生の根本の原因は、以下の問題に起因。
    • 金融機関における不適切なリスク管理(証券化商品、オフバランス機関、リスク管理体制、インセンティブ構造)
    • 短期資金依存・高レバレッジ投資のビジネスモデル
    • 格付機関によるリスクの過小評価(格付手法、利益相反、格付けへの過度の依存)
  • 金融規制・監督当局側も、新しい金融商品や金融イノベーションについていけず、対応が不十分。

3.高レバレッジの解消とその影響

  • 金融市場の正常化に向けては、高レバレッジの解消が必要。しかし、レバレッジの解消は、金融と実体経済の「負の悪循環」をもたらすおそれ。
  • 欧米の金融機関は、2003年以降大幅にレバレッジを拡大。2003年の水準まで、レバレッジ比率を戻すためには、ヨーロッパの銀行は、今後、総資産額を大幅に圧縮する必要。英国では約37%、ドイツでは約36%、フランスでは約17%程度の資産圧縮が必要。

4.金融危機再発防止に向けて

  • 金融危機の再発防止に向けて、2008年11月の金融サミットの「首脳宣言」において、5つの原則と行動計画を決定。
  • 規制・監督体制の見直しも重要な課題の一つ。アメリカでは、南北戦争期及び1930年代からの歴史的経緯により、連邦政府・州政府にまたがり、複雑かつ重層的になっている体制の抜本的な見直しが必要。
  • 今後は、新たな金融イノベーションを阻害しない一方で、適切なリスク管理が行われるような「より良い規制」(ベター・レギュレーション)により、「自由と規律」のバランスのとれた市場環境の構築が必要。


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