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7 シンガポール     Republic of Singapore

シンガポール経済のこれまで

<2007の経済>
 2007年の経済成長率は7%台となる見込みである(政府見通し7.0〜8.0%、民間機関25社の平均7.1%(07年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(07年4月時点5.3%)に比べ上方修正されている。07年前半の成長率は、設備投資や民間消費といった内需が景気をけん引し、前年比7.6%となった。外需は、医薬品等の非IT関連財の輸出が増加した一方、主要輸出品目のIT関連財が半導体価格の下落等の影響を受けて減少し、純輸出の寄与は伸び悩んだ。年後半をみると、7〜9月期の成長率は前年比8.9%となった。7月に実施された商品・サービス税(GST)引上げの影響が懸念されたが、失業率が1.7%と約10年ぶりの低水準となるなど良好な雇用環境を背景に、民間消費は堅調に推移した。また、外需も非IT関連財の輸出が増加し、成長を押し上げた。10月以降も引き続き堅調な民間消費のほか、総合リゾート施設等の大型商業施設の建設が一部で開始されるなど建設投資の拡大にも支えられ、景気の拡大が続くと見込まれる。

シンガポールの主要経済指標

<2008年の経済見通し>
 2008年の経済成長率は6%程度となる見込みである(政府見通し4.0〜6.0%、民間機関25社の平均5.8%(07年10月時点))。良好な雇用環境を背景とした民間消費の増加や、09〜10年に完成予定の大型商業施設の建設等による建設投資の増加、医薬品を始めとした非IT関連財の輸出等が引き続き成長を支えると見込まれる。
 一方、下方リスクとしては、世界経済の減速による輸出の鈍化のほか、国際商品価格の上昇による物価上昇の影響が挙げられる。

<財政金融政策の動向>
 財政政策については、2007年3月に可決された07年度予算は、税制改革と社会保障制度の充実に重点を置いている。税制改革として、商品・サービス税(GST)の引上げ(07年7月1日より5%から7%へ引上げ)や法人税の引下げ(07年中の所得に対して適用、20%から18%へ引下げ)等が盛り込まれ、社会保障制度の充実については、日本の年金・健康保険に相当する中央積立基金(CPF)の雇用者拠出負担比率が1.5%ポイント引き上げられ14.5%とされた(低所得労働者は対象外)。こうした制度改革の効果も踏まえ、07年度の財政収支は、赤字額が06年度の13億シンガポール・ドル(GDP比0.6%)から07年度には7億シンガポール・ドル(同0.3%)へ縮小すると見込まれている。
 金融政策については、シンガポールは為替レートを通じた金融政策を実施しており、04年4月以降、シンガポール通貨庁(MAS)は物価上昇圧力を抑制するため、シンガポール・ドルの名目実効為替レートは小幅で緩やかな上昇とする方針を維持している。しかしながら、07年10月に発表された半期経済報告では、国内の労働市場のひっ迫や原油・食品価格の上昇等から物価上昇圧力が持続するとして、現行の金融政策を維持しつつも、シンガポール・ドルの増価ペースを若干速めることを発表した。なお、MASは前述のGSTの引上げが07年、08年の消費者物価上昇率をそれぞれ0.5〜0.7%ポイントずつ押し上げると見込んでおり、通年の消費者物価上昇率が07年は1.5〜2.0%、08年は2.0〜3.0%になるとの見通しを示している。


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