16 イタリア Republic of Italy
<2007年の経済>
2007年の経済成長率は、06年とほぼ同じ水準である2%弱となる見込みである(政府見通し1.9%、民間機関5社の平均1.8%(07年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(07年4月時点1.8%)からあまり変化していない。内需については、雇用環境の改善から、個人消費が加速している。また、2000年以来の高水準の企業景況感を背景に06年に高い伸びとなった設備投資は、生産の弱含みや在庫の積み上がりを背景に、07年はほぼ横ばいとなっている。財の輸出は、主要輸出先であるヨーロッパの景気回復、高級品へのシフト等の差別化戦略といったリストラクチャリングによる国際競争力回復により、徐々に改善している。このような状況の中で、雇用は改善し、失業率は低下している(07年4〜6月期6.0%(前年同期の6.9%から0.9%の低下))。消費者物価上昇率(前年同月比)は、エネルギー価格や食料品価格の上昇を受けて、07年10月以降上昇している(07年11月速報値(たばこを含む)2.4%)。
<2008年の経済見通し>
2008年は、潜在成長率(OECDによると1.2%)を若干上回る成長に減速すると見込まれる(民間機関5社の平均1.4%(07年10月時点)。個人消費は、実質可処分所得の増加を背景に、引き続き堅調に推移するものの、貯蓄率の高まりにより若干減速すると見込まれる。また、固定投資は、金融環境の悪化や政府投資の減少により、減速すると見込まれる。一方、輸出は堅調に推移するものの、輸入がユーロ高により回復することから、純輸出の寄与は若干のマイナスになると見込まれる。こうした見通しに対する下方リスクとしては、アメリカ経済の一層の減速やさらなるユーロ高による輸出の減速が挙げられる。
<財政政策の動向>
2006年の財政赤字はGDP比4.4%となっており、4年連続でEUの「安定成長協定」で定める3%を大きく超えた。ただし、これには、政府が社用車への付加価値税を経費として認めてこなかったことに対して、欧州裁判所が06年9月の判決で過去4年分の還付を命じたことなどの06年限りの一時的要因による影響(GDP比1.2%)が含まれている。政府は06年12月に欧州委員会に提出した「安定プログラム」の中で07年に同2.8%まで財政赤字を削減する方針を打ち出しており、欧州委員会も07年予算の着実な実行を前提に07年には過剰赤字が是正されるとしつつも、中期的な財政戦略が不透明なままであると指摘した。なお、政府債務残高(GDP比)は106.8%(06年)と依然100%を超えており、06年の利払いがGDP比4.6%となるなど利払い費の負担は重い。
景気回復による歳入増や上記の一時的な要因のはく落により、07年秋の欧州委員会の見通しでは、07年と08年の財政赤字をともにGDP比2.3%と見込んでいる。政府の08年予算案でも、法人税率の引下げや住宅関連の減税、公務員給与の増加等の財政赤字拡大要因があるものの、徴税の強化や課税ベースの拡大により、08年の財政赤字をほぼ前年並のGDP比2.2%と見込んでいる。