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第 I 部 海外経済の動向・政策分析

第1章 サブプライム住宅ローン問題の背景と影響

第1節 サブプライム住宅ローン問題の背景

3.サブプライム住宅ローンの普及に内在したリスク

 サブプライム住宅ローンは、住宅ブームにおいて住宅価格の高い伸びが続いたことなどを受け、将来の住宅価格の上昇を見込んだ借換えを前提に、中低所得層や投資目的による住宅取得等において急速に普及した。高リスクなサブプライム住宅ローンの貸出しは、証券化の進展によって、リスクを効率的に分散できたことや、住宅ローン市場と資本市場との融合を通して資金調達の自由度が向上したことで、新たに参入した貸付機関を含め魅力的な住宅ローン市場となった。また、低金利や十分な流動性のもとで国内外の金融機関や投資家が高利回りな証券化商品に資本投入を進める中でサブプライム住宅ローン関連のRMBSやCDOへの需要が高まったこともサブプライム住宅ローンの普及を促進したと考えられる。
 こうしたサブプライム住宅ローンの普及には大きなリスクが内在していた。住宅ブーム後半の時期に、既に高水準な住宅価格等を前提に家計の住宅取得能力指数が急速に低下したにもかかわらず、貸付機関等によるサブプライム住宅ローンの貸出しの促進とあいまって、信用力の低い層が住宅価格のさらなる上昇を見込んで住宅取得を加速させた点である(第1-1-28図)。このため、期待した住宅価格の上昇が実現せず調整局面へと転じた場合、担保価値の減少によって、これらの層が返済可能な額以上のローン支払負担に耐えられず住宅保有を維持できなくなるだけでなく、担保価値を超える過大な負債を抱えるリスクを含んでいた。また、証券化に潜むインセンティブ問題や緩和気味な国際金融環境は、貸付機関の融資基準や投資家のリスク評価を緩ませ、本来見込むべき損失リスクを加味せずに貸付や投資を進める環境をもたらしたと考えられる。


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